鉄道大国・ニッポンの各地には、個性豊かな路線や駅がある。『AERA 2016年9月26日号』では、乗客の生活と、運行を支える技術が手を携えて発展を遂げてきた鉄道のさまざまな姿を、東西対決で特集。ここでは渋谷駅と名古屋駅の乗り換え対決を紹介する。
* * *
大都市のターミナル駅には乗り換えが難しい駅がある。
2013年、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が開始されたのにともない、東横線のターミナルである渋谷駅が地上2階から地下5階に移転した。これにより横浜方面から新宿・池袋まで乗り換えなしで行けるようになった半面、たとえば渋谷駅で山手線に乗り換えるには、地下からエスカレーターを乗り継ぐなど約6分もかかるようになってしまった。この不便さは現在、東急グループの進める渋谷の再開発に起因する。現在の乗り換えルートはあくまで仮のもので、19年には本格的なアクセス改良工事の完成が予定されている。
だが、現在でも高齢者や障碍者、荷物を抱えた観光客にとって負担は大きい。そこで来年夏には改善策として、エスカレーターの増設や仮設通路の整備が、工事完成までの暫定的措置ながら行われることになった。
乗り換えのしにくさでは、JR・名鉄・近鉄・地下鉄の各線が集まる名古屋駅も引けをとらない。とくに新幹線と名鉄名古屋駅は乗り換えルートがわかりづらいとの評判をよく聞く。
名鉄名古屋駅は地下駅で、目的の電車に乗るまでがまたややこしい。その原因は、ホーム3面2線しかない駅の狭さにある。このうち中央ホームは降車および特急の「特別車」(座席指定車)の乗降用、残る両側に1面ずつあるホームが特別車を除く車両の乗車用にあてられている。
普通のターミナル駅なら、列車の向かう行先ごとに番線を振り分けるところだが、この駅では一つの番線に10以上の行き先の列車が発着する。そこで乗客が混乱しないよう、列車の停車位置を方面ごとに変えてある。中央ホーム上には列車の乗車位置を示す案内板が方面別に色を分けて配置され、先発列車の案内板は点灯(板上部のランプも点滅)するしくみだ。乗客はそれを目印に並べばよい。それでも慣れない人は戸惑うだろう。
ここへ来て、名古屋駅周辺では27年のリニア中央新幹線開業を見据えた再開発構想が持ち上がっている。
名鉄もまた昨年3月に発表した中期経営計画のなかで、再開発における考え方を示した。そこではたとえば基盤整備案として「異なる交通機関のあいだでスムーズに乗り換えが可能な空間をつくること」などが挙げられている。これらの実現にあたっては、名鉄名古屋駅が拡張される可能性も考えられる。名鉄によると、今年度末までに再開発全体計画を作成するとのこと。利用者にとっては待ち遠しい限りだ。(ライター・近藤正高)
※AERA 2016年9月26日号