「正恩氏は自身が若くて未熟であることは分かっていて、利用されることへの警戒心が強かったはず。父親からも継承の際に、気をつけるよう言われていたのだろう」
十大原則には、「党の唯一的領導体系から逸脱し行動する人物に対し、職位と功労に関係なく、厳しく闘争を行う」とある。北朝鮮では、「唯一的領導体系違反」の告発や密告を通し、党や軍の組織の中で激しい足の引っ張り合いや牽制(けんせい)が行われてきた。
正恩体制となってからの4年半で粛清された幹部の数は、はっきりとはわからない。だが、数十人に及ぶことは間違いない。最近では7月ごろ、金勇進(キムヨンジン)副首相が処刑されたとされる。
党内の把握も進んだ正恩氏は、秘密警察の国家安全保衛部と党組織指導部を信頼し、粛清を主導させていると石丸氏は話す。ただ、伝えられた情報に基づき、処刑に「GO」を出すのは、正恩氏自身だ。(編集部・山本大輔)
※AERA 2016年9月26日号