通算で5度目、今年だけで1月以来2度目となる核実験を強行した北朝鮮。国際社会は、かつてないほどの危機感に包まれている。いま、あの国で何が起きているのか。私たちはどう向き合えばいいのか。
68回目の建国記念日にあたる9月9日、北朝鮮の大地が揺れた。咸鏡北道吉州(ハムギョンブクトキルジュ)郡付近で、マグニチュード5.0。2006年10月の初実験以降、通算5回目となる核実験だった。今年1月と同じ吉州郡豊渓里(プンゲリ)の実験場で行われた核実験は、過去最大級の爆発規模だったという。
朝鮮中央テレビが報じた内容は、さらに国際社会の警戒心をあおった。
「核弾頭の威力を判定する核爆発実験を行った。計算通りの結果が出た」
北朝鮮が核弾頭の爆発実験実施を公表したのは、初めてのことだ。核弾頭をミサイルに搭載する技術を確立したと強調するもので、同時並行で開発を進める長距離弾道ミサイルに核弾頭を搭載する能力を得る状況が近いとすれば、朝鮮半島情勢は重大な局面を迎えることになる。
●高をくくっていたら
4日前の9月5日には中距離弾道ミサイル「ノドン」を立て続けに3発発射するなど、ミサイル発射実験は今年だけですでに10回を超える。先月24日には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に初めて成功したと見られるほか、長距離弾道ミサイル「テポドン2改良型」や中距離弾道ミサイル「ムスダン」など、あらゆる射程のミサイルを計20発以上も発射する異常事態となっている。
最大の懸念は、技術の進歩が確実に認められることだ。もはやかつてのように、「実戦配備は不可能だ」などと、言い切ることはできない。世界で、北朝鮮の軍事的脅威が高まっているのだ。
北朝鮮情勢や軍事が専門の武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授はこう話す。
「ミサイル開発のプロセスでは次に何をするのか、軍事戦略の下で決まっていくロードマップがある。スカッドミサイルからノドン、テポドン2を作り、弾頭の小型化やミサイル誘導技術の開発、そしてSLBM。北朝鮮は右肩上がりの核戦略を持ち、そのロードマップに基づき実験してきている」
着々と技術革新を進めてきた北朝鮮。武貞特任教授は、
「崩壊間際の体制が危ないものを片手に世界にPRしているという見方だけでいくと、北朝鮮の問題は全く解決できない」
と警鐘を鳴らす。