健常者のサポートが必要な競技も多い。例えば視覚障がい者の陸上では伴走する「ガイド」、ブラインドサッカーでは声で状況を伝える「コーラー」の存在が鍵を握る。

 技術力のみならず、支援体制が競技力に直結するパラリンピックは、私たちの社会のあり方を問う大会でもあるのだ。

●施設利用も条件付き

 日本の現状はどうか。先の調査では、パラリンピック選手の5人に1人が施設利用を断られた経験や条件付きで認められた経験があると回答した。車いすラグビーや車いすバスケの選手たちは「床に傷がつく」、視覚障がいや知的障がいの選手は「危ない」と言われたという。

 経済的には、東京オリンピック・パラリンピックの招致が決まって以来「パラリンピック・バブル」とも言える状況で、障がい者スポーツの競技団体や選手を支援する企業も国の予算も増えた。ただ、藤田教授は、「バブル後」を懸念する。提案したいのは、「体育教員を目指す学生に障がい者スポーツを必修化すること」だ。

 普通学校で学ぶ障がい児たちは特に、障がい者スポーツと出合う機会を得にくい。藤田教授の調査では、体育の教員免許を取得できる大学のうち、障がい者スポーツの授業がある大学は47.9%。私大が中心で、体育教員を多く出している地方の国立大学では障がい者スポーツを学ぶ機会は少ないという。

 世界的にパラリンピックの競技レベルが高まる中、日本の夏季大会のメダル獲得数はアテネ大会の52個をピークに北京大会27個、ロンドン大会16個と右肩下がり。メダルを多く獲得しているのは選手層が厚く、支援体制の整っている国々だ。2020年を控え、社会が障がい者スポーツを支える仕組みを整える取り組みが求められている。(編集部・深澤友紀)

AERA 2016年9月26日号

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