通常、音楽のストリーミング再生では、プリフェッチ(先読み)と呼ばれる技術が使われることが多い。スムーズに再生するために、アルバムやプレイリストの次の曲のデータまで先に読み込んでおくことだ。

 開発当初、AWAではあえてその技術を導入しない決断をした。先読みしてデータを読み込むとデバイスの通信量を消費するため、通信量に上限があるユーザーにとっては負担となる。通信量を最低限に抑えながら、ストレスなくスムーズな再生ができる技術を追求したという。

 アプリ内でのユーザー行動は、すべてデータとして蓄積される。たとえばAWAでは1カ月の無料期間がある。無料期間にどういう使い方をしたユーザーの課金転換率(有料会員になる確率)が高いかを分析して快適な使い心地のヒントを探り、機能を改善、強化する。昨年5月のサービス開始以降、重ねた改善の数は1千にも上るという。

●わずかな変化でPV増

「音楽は欠かせない」という人にとって、音楽配信アプリが“スタメン入り”するのは、難しいことではないかもしれない。

 だが、必ずしも生活に必須ではないアプリではどうだろうか。

 東京・渋谷と独・ベルリンにオフィスを置くグッドパッチは、ウェブやモバイルアプリのUI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)の設計・デザインを専門に行うデザイン会社だ。

 UIとは、私たちがアプリ上で接触する画面表示、ページデザイン、操作感などを指す。

 グッドパッチが昨年から携わっている案件のひとつが、女性向けメディア「ガールズちゃんねる」のUI改善だ。「ガールズちゃんねる」はユーザーが投稿した話題に、コメントや投票ができる匿名掲示板で、ジェイスクエアードが運営する。

「『真田丸』見てる人、集まれ~!」「この秋に買う予定の靴」「妊婦さん、語り合いませんか」

 など、あらゆるトピックがあり、コメントが並ぶ。

●飽きる前に遷移させる

 同メディアは広告収入をビジネスの大きな柱としているため、ページビュー(PV)増はクライアントに対する必達条件だ。いかにしてアプリ内での回遊率を上げ、滞在時間を増やすか。コメントに対して「+」「-」の投票ボタンを押す「アクション率」を上げられるか。それがヘビーユーザーを増やし、PV増につながる。

 グッドパッチUXデザイナーの山口真朝さん、グロースデザイナーの右寺隆信さんが教えてくれた改善ポイントは、例えばこのようなものだ。

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