●情報収集に苦労

「保活」が健全な保育園選びとさえ言えない状況を改善することはできないのか。

 厚生労働省が今年3月の「待機児童解消緊急対策」に基づいて実施した「『保活』の実態に関する調査」によると、保活で最も苦労や負担を感じたこととして、回答者の4~5割が「市役所などを何度も訪問」と「情報収集」をあげている。保育園に関する情報がもっと整理されれば、無用な焦りや不安を生まず、保活の苦労は減るのかもしれない。

 月間7万6千ページビューがあるブログ「東京23区保育園マップ」は、自宅近くの保育園の空き状況が一覧できるようになっている。運営しているファイナンシャルプランナーの30代夫婦は、第1子の保活中、保育施設の種類や申し込み方法がわかりづらく途方に暮れた経験から、マップを作った。

「育児に追われながら、決められたタイミングで職場復帰できるのかという不安を抱きつつ、細々とした事務手続きをするのは大変。送迎できる範囲にどれだけ保育施設があるのかを楽に把握できれば、親にとって一つの安心材料になるのでは」

 政府は待機児童解消のため、育休を最長2年程度にする方針を示した。同時に、保活のために親が育休を切り上げたり延長したりせずに済むような保育政策も求められている。(編集部・小林明子)

■保活を経て保育園つくった宮村柚衣さんが語る

 在宅で経理の仕事をしながら2人を出産し、本格的に働こうと区に入園を申し込んだのに、届いたのは不承諾通知。自営業で子どもは早生まれの1、2歳児だから無理もないけど、その晩は悔しくて眠れませんでした。寝床で「じゃあ保育園をつくろう」と。夫も後押ししてくれました。

 私は経営者ですが、保育については素人。開園1週目に「何かズレてる?」と感じ、2週目に現場を離れました。

 保育園の認可化に向け、自宅でも仕事に追われていた時、保育士が「落ち着いたらお子さんとデートしてあげて」。スカイツリーに連れていき、久しぶりの子どもの笑顔にハッとして「これが保育ということか」と感じました。それから私も保育士資格を取りましたが、現場に任せています。保育士たちの提案と努力で、食材宅配料を見直して月3万円を捻出し、煮干しや昆布のおやつを導入。親が望む保育を実践しています。

 保育士8人は全員が正社員。国の基準より多く配置し、個人のニーズに合わせたシフトや休暇を導入しています。働きやすい環境づくりのアイデアを「保育士の楽園project」と名付け、全国に広めたい。行政に働きかけているのは、土曜保育や延長保育の見直しです。小規模保育所では、1人の子どものために3人の保育士が土曜出勤や残業をすることもあります。思い切ってやめたり大規模認可と統合したりすることも大事です。さまざまな形態の保育施設があるのだから、親も保育士もニーズに合った保育園を選べるようにする。それが待機児童解消の近道だと思います。

AERA 2016年8月29日号

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