布だけでぶら下がり、空中ブランコで宙を舞う。そんな曲芸は、プロのサーカス団員だけの世界だと思ってた。いやいや実は、普通の人が気軽にできる「フィットネス」に進化していたのだ。
地上7メートルのスタート台まで、はしごで登る。高所恐怖症ではないが、下を見ると、幅4メートルの安全ネットがやたらと細く見えて、足がすくむ。こんな手に汗握る緊張、久しぶりだ。
「下を見ずに、遠くの木を見てください!」
目の前に広がるパノラマに目をやる。ゆっくりと、空中ブランコのバーをまず右手でつかむ。体がぐっと下に傾く。後ろからインストラクターが腰につけた命綱をしっかり引っ張ってくれて「大丈夫ですよ」と言うものの、両手でそのバーを持つのが心底怖い。
「えい、やっ!」
重力に身を任せると、振り子になった体はスピードを上げてスイングした。
わ、飛んでる! なんかすごいぞ、この感覚。雑念が全て消える瞬間……気持ちいい。
1往復し、指示に従って手を離し、命綱で安全ネットの上に降ろされた。安心のあまり腰が抜けそうになった。怖さを克服した自分を褒めてあげたい気持ち。私、やればできるやん!!
●社会性も身につく
千葉県柏市にある「トラピーズヒーローズ」で、空中ブランコを体験した。トラピーズとは、英語で空中ブランコのことで、昨春にオープンした。初心者はもちろん、6歳から体験できる。地上で飛び立つ姿勢の練習をするだけで、すぐに空中へ。要予約で1時間3千円から。定期的に通う登録会員が現在、40人ほどいる。
この日も40~50代の男女が次々、空中に飛び出していた。
週1回通う50代の女性会社員は、「初めてやった時、できなくて悔しくて。今は難しい技ができた時の達成感がたまらない」とハマる理由を話す。体が引き締まり、着られなくなった服も再び着られるようになった。
代表の大西広嗣さんは元サーカス団員だ。
「アメリカに行った時、老若男女が空中ブランコをやるのを見て、日本でもできないかなと思って。空中ブランコはボディーコンディショニングに最適。体幹やお尻の筋肉が鍛えられ、バランス感覚もよくなる。教えてもらわないと上達できないので、社会性も磨かれます」