「はい、じゃあiPadはいったん裏返しにして、プリントを見てください」

 今度は4人の班で頭を突き合わせての協働学習が始まった。それぞれの考えを出し合って、話すこと数分。再びiPadを出して、グループごとに自分たちの答えを送信。すぐに全グループの解答が電子黒板に一括表示された。先生の話や板書を受け身で「聞く」「見る」のではなく、生徒自身が「書く」「話す」機会が多いせいか、ぼんやりしている子はいない。

●これぞ新しい学びだ

 隣のクラスでは数学の授業が行われていた。担当の湊川祐也教諭は、生徒が使うiPad教材を、マックで自作しているという。教科書との最大の違いは、生徒が「体感」できることだ。例えば、空間図形は画面上で生徒が動かせるようになっており、上からや横からなど視点を変えられる。1次関数のy=ax+bのグラフであれば、aの値を指で動かすことで、グラフの傾きが変わることを体感できる。

「タブレットでは、黒板では表現できないことを表現できる。いきなり抽象から入るより、具体的なイメージから入ったほうが理解しやすい」(湊川教諭)

 三雲中では全学年、全授業でiPadを使うことにし、先生同士がうまくいったこと、いかなかったこと、新たに発見したことをすべてシェアしている。ICT活用をリーダーとして進めてきた楠本誠教務主任によると、特に導入当初は、機器を使うことばかりに目が向いてしまった。楠本教務主任自身、理科の実験では変化の瞬間が鮮明に記憶されるからと、生徒に動画を撮らせていた。しかしある時、実験の授業が、動画撮影大会になっていることに気づいた。

 本当に大事なのは、機器を使うことではなく、子どもたちにどんな力をつけさせるかだ──。教師たちの自問が始まった。

「目指す力をつけさせるのに一番有効なのが紙なら紙、ICTならICTを選べばいい。そうやって教師一人一人が自分の授業を一から見直し、再構築した。その結果、教え方が変わり、学び方が変わっていきました」

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