墓じまいは行政の手続きが煩雑なうえ、菩提寺との交渉も一筋縄ではいかないことが多い。こうした中、破格の値段で全てを請け負う「改葬代行サービス」を行うベンチャー企業が現れた。
「実家の墓が遠方で、両親亡き後の墓参りが大変」「子どもがおらず承継する人がいない」。そんな場合には、今ある墓を引っ越しして近くの墓地に納めたり、承継の必要がない合葬や永代供養墓、海洋散骨、樹木葬などを利用したりするのが有力な選択肢だ。
とはいえ、墓から遺骨を取り出して別の場所に移す改葬の手続きは簡単ではない。特に難航するのが菩提寺との交渉だ。高額な「離檀料」を請求されトラブルとなるケースもある。
東京に住むAさん(男性、59)は、大阪に住む父が亡くなった際、相談なく公営の葬儀場と火葬場を手配したことで住職の怒りを買ってしまった。それ以来、住職は納骨や法要のお布施に法外な「最低金額」を指定してくるようになった。
「あまりに非常識な額なので払わずにいたら、『先祖のバチが当たる』などと脅してくるように。母親が精神的に追い詰められてきたので、檀家をやめて墓を移転させることを決めました」
Aさんが離檀を告げると、住職は「許可しない」と言い、高額な離檀料を請求してきた。改葬許可に必要な埋蔵証明書を出してくれないため、役場で事情を話したところ許可証を出してもらえたという。
しかし、墓を開けようにも住職は境内に立ち入るなと通告してきた。そこでAさんが弁護士を立て訴訟を起こしたところ、住職は閉眼供養を条件とする妥協案を提示してきた。
「供養はするが、この住職にはさせたくない」
Aさんは僧侶派遣サービスを利用して閉眼供養し墓を撤去、東京の墓地に父と先祖の遺骨を納めた。
「宗教は心の安寧を得るもののはずなのに、伴侶を失ったばかりの年老いた母に大きなストレスを与えたことが許せない」
先祖代々付き合ってきた寺に自分で「別れ」を切り出すのは気が重いものだ。核家族化や少子高齢化でライフスタイルが多様化する中、こうした寺とのトラブルがあとをたたない。