映画「ファインディング・ドリー」が全米で公開中だ。オープニング週末興行収入は1億3600万ドルとアニメ映画の記録を更新。何が人々の心をつかんだのか。
オレンジと白の色鮮やかなクマノミの父と息子が冒険を繰り広げた映画「ファインディング・ニモ」は2003年公開。13年の歳月を経てピクサーが送り出す続編が、ナンヨウハギのドリーが主人公の「ファインディング・ドリー」だ。
ドリーは、前作でニモの父マーリンと一緒にニモを捜す旅をしたナンヨウハギの女の子。今回の作品では、明るく楽天家だが極度の忘れんぼうのドリーが、唯一忘れなかった「家族の思い出」を手がかりに、彼らを捜す旅に出る。
●欠点を持つ生き物たち
「僕は1作目の時から、ドリーの心が傷ついていたのを知っていたんだ」
と語るのは、両作品を手がけたピクサー・アニメーション・スタジオのアンドリュー・スタントン監督だ。
何もかも片っ端から忘れてしまうドリーは、魚たちの社会で疎まれ、見捨てられる苦い経験を何度も味わったはずだ、とスタントン監督は言う。能天気に見えて「アイム・ソーリー」を口癖のように繰り返すドリー。相手の欠点は指摘せず、いいところを探して褒める彼女には、
「自分自身を好きになってほしかった」
とスタントン監督。
「ドリー」には他にも、視力の弱いジンベエザメや音波で物体を認識する能力に自信がないシロイルカなど、何かしら「欠点」を持つユニークな海の生き物が登場する。彼らの力を借りて、次第にドリーが自信を取り戻す過程を描いた点が、
「アニメーションのキャラクターの新境地を開いた」
と米国で話題になっている。
「13年前の技術では難しくて実現できなかっただろう」
とピクサーのスタッフが口をそろえるのが、「陰の主役」と言われる新キャラクター、タコのハンクの描写だ。
周囲の環境に合わせて色や質感を自由自在に変えられる擬態能力を持つハンク。その制作には、2年半の時間と約50人のスタッフの力が必要だった。これまでにピクサーが作り出したすべてのキャラクターのうち、最も難しかったのがこのハンクだという。