日本海側の発症率高い?2012年にがんと診断された患者の割合。全国を100とし、地域による年齢構成の差を調整して比較。国立がん研究センターの資料から
日本海側の発症率高い?
2012年にがんと診断された患者の割合。全国を100とし、地域による年齢構成の差を調整して比較。国立がん研究センターの資料から

 国立がん研究センターが6月29日に発表したがん罹患率は、都道府県によって大きな差があった。食生活や運動の仕方、ライフスタイルなどでリスクが違う。がんにならないためにはどうすればいいのか。

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 がんは、予防できる。

 国立がん研究センターによれば男性のがんの53.3%、女性のがんの27.8%が、努力次第でがんの予防が可能だという。男女差がこれだけ大きいのは、喫煙や飲酒などがんのリスクとなる生活習慣が、男性のほうに多いからと思われる。

 同センター「社会と健康研究センター」の津金昌一郎センター長はこう話す。

「がんは20~30年かけて発生し、最終的には命を奪うこともあります。若いうちから、がんに罹らない生活習慣を身につけることが大切です」

 がんは遺伝が関係するものは5%程度。ほとんどが食生活や運動などの生活習慣が大きくかかわる。では、どのような生活習慣ががんを防ぐのか。身近な食生活から見ていきたい。

 まずは、塩分。

「日本食は魚介類や野菜を中心とするなど世界的に見ても素晴らしい食生活ですが、唯一の欠点は、高塩分ということ」(津金氏)

 塩分を摂りすぎると、胃酸から胃を保護する粘液を溶かし胃粘膜が炎症を起こしたりするため、胃がんが発生しやすくなる。

 6月29日、国立がん研究センターは全国47都道府県のがんの罹患状況を初めて公表した。2012年のデータを解析し、25種類のがんの罹患率などを、男女別に算出した。

 胃がんは秋田県が最多で、続いて石川県、山形県、富山県など日本海側の地域で高い値が出た。これは日本海側に特徴的な、漬物や干物など塩分の多い食生活が深くかかわっていると考えられる。秋田県の1日あたりの食塩摂取量は11.1グラムと全国平均(10.4グラム)を0.7グラム上回り、全国トップクラス。秋田県では食生活の減塩を奨励しているが、食生活習慣は簡単には改まらない。

 そうした中、県を挙げて「減塩運動」に取り組んできたのが、今や「長寿日本一」で知られる長野県だ。もともと長野は雪国ゆえ塩分摂取量の多い土地柄で、1960年代には脳卒中の死亡率が全国上位だった。そこで官民一体で減塩運動に取り組んだ。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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