そして今も性暴力は繰り返され、米軍属による殺人・強姦致死事件が4月に起きた。フィッシャーさんは涙声でこう言う。
「本当に悔しい。もし日本政府がこれまで地位協定の不平等についてきちんと抗議し、改定されていたら、彼女は今も、生きている」
●背景に米軍の侮蔑教育
この不平等な日米地位協定に加え、米軍の体質も事件を誘発しているという指摘がある。在沖米海兵隊の新人兵士への研修で使う資料に、沖縄蔑視と読める内容が書かれているのだ。
「沖縄の政治は基地問題をテコに利用している」
「沖縄の人々は情報に疎く、限られた情報で物事を見ている」
資料を入手した英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏は、「米軍が沖縄の人々を侮蔑するよう教育している」と指摘し、こう続ける。
「戦後、米国が沖縄を占領した当時から続く植民地意識の表れだ。海兵隊員にとって赴任地の沖縄を知る唯一の機会である研修の内容が、若い兵士の認識や態度にも大きな影響を与えている」
女性たちの性暴力被害に詳しいアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」の池田恵理子館長は、「軍隊の拠点である基地は、若者たちに殺人の訓練をさせ、彼らを暴力装置に変える場所。基地がなくならない限り、性暴力はなくならない」と指摘。面積が日本全土の0.6%しかない県内に74%もの米軍専用施設が集中している現状を踏まえ、こう続けた。
「本土が沖縄に多くの米軍基地を押しつけていることが沖縄の人たちの尊厳や命も奪う、ということも認識しなければならない」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2016年7月4日号