米紙ニューヨーク・タイムズは、直接関係があったかなかったかは、IS本部にとっても、あまり重要ではないと伝えている。過去2年間、ISに自ら忠誠を誓った海外の支援者が殺戮を行うのは、海外戦略のコアになっているという。
●銃規制ができるのか
マティーン容疑者が「一匹狼」であれば、今回の事件は、同性愛者やヒスパニック系移民に対する「ヘイトクライム」の側面が大きい。さらに同容疑者は、13年から14年にかけてFBIの捜査を受けていた。テロリストとなる可能性が高い同容疑者が、殺傷能力が高い自動小銃を合法的に購入できたことも大問題だ。
犯行に使われた自動小銃「AR―15」は、ベトナム戦争中に製品化され、多くの弾を込められる弾倉を持ち、強力だ。銃撃が始まってから、警察がマティーン容疑者を殺害するまで3時間もかかったことで、死傷者の数が膨れ上がった。
これを受けて、クリス・マーフィー上院議員(民主党)が上院議会で、15時間近くに及ぶ「フィリバスター(長時間の演説による議事妨害)」に踏み切り、テロ監視者リストに名前がある人物による銃購入規制法案の採決を求めた。同法案は、これまで何度も浮上しながら、銃規制に強く反対する共和党議員による抵抗で、不成立に終わっていた。しかし、マーフィー議員らの訴えで、同法案と関連3法案が、少なくとも採決に漕ぎつける見通しとなった。
ロイター通信などの調査によると、米国人の71%が緩やかな銃規制に賛成し、14年調査時の60%から上昇している。
フロリダ銃乱射事件後の16日、英国中部で、女性下院議員ジョー・コックス氏(41)が、銃で襲われ、病院で死亡した。警察官でさえ銃を携行しない英国でも、銃がいかに簡単に人の命を奪うのかが浮き彫りになった。
最低限の銃規制が達成できるのか、米議会は正念場だ。成立のために、さらなる犠牲者を待ってはいられない。(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2016年6月27日号