余震が続くなか、わが家を離れ、大勢の人間とともに避難所生活を余儀なくされる──被災者がさらされるストレスは想像を超える。家屋に被害があれば、生活再建への不安も重なる。眠れない、焦燥感があるといったストレス反応が出てもおかしくない。
だが、こうしたストレス反応に過剰に介入するより、この時期は大切なことがある。
「まず、『安全を確保する』『眠る場所がある』などと、現実の不安を解消することです。生活再建のメドが立てば、次の一歩を踏み出しやすくなります」
現場でDPATを統括する熊本県精神保健福祉センターの山口喜久雄所長はそう指摘する。
5年前の東日本大震災でも、被災者の心のケアが問題になった。震災後、福島に支援に入り、今年4月に福島県南相馬市でほりメンタルクリニックを開いた堀有伸医師は、被災者の心の状況には段階があると話す。
「直後は災害に衝撃を受けた『茫然自失期』になり、次にいたわり助け合う『ハネムーン期』、現実に直面する『幻滅期』を経て、再建期を迎えると言われています」
ハネムーン期では地域の一体感が増し、多くの人が課題に向かって力を合わせ、頑張る傾向にある。
「ただし頑張りすぎれば反動もある。予定を入れすぎず、余力を残しておいてほしい」(堀医師)
●住環境戻った後が危険
うつ病のリスクが増すと堀医師が見るのが、その後の幻滅期。東日本大震災でも、住む環境が安定してからがそうだった。
6月に入り、熊本の被災地でも水道、電気、通信などのライフラインの復旧が進み、仮設住宅への入居も始まりつつある。復興は順調に見えるが、これから心の問題が深刻になる時期に入ることになる。
加えて、この時期に心配されるのが自治体の職員たちだ。