

1971年生まれ。94年に「居酒屋ゆうれい」で映画デビュー。黒沢清監督作品では、「ニンゲン合格」「蟲たちの家」「LOFT ロフト」に出演。近年はテレビドラマでも活躍(撮影/今村拓馬)

1955年生まれ。97年に公開された「CURE キュア」以降、世界的に注目を集める。オールフランスロケで撮影された「ダゲレオタイプの女」の公開も、今秋に控える(撮影/今村拓馬)
「クリーピー 偽りの隣人」で4度目のタッグを組んだ黒沢清監督と、俳優の西島秀俊さん。初タッグ以来17年、互いの存在をずっと意識してきた「同志」だ。2人の関係、やっぱり特別ですか?
──映画「ニンゲン合格」で初めてご一緒されたのが、約17年前。お二人の関係は、変わりましたか。
黒沢清:「ニンゲン合格」の後もいくつかの作品に出ていただいていますが、どうしたことか、ある時からものすごい人気者になって。当然といえば当然なのですが。テレビをつけて西島君を見ない日はないというくらいになってからは、僕の知らない領域にこの人は行っているんだ、という憧れとともに、僕はもう取り残されてしまったという気持ちもありました。
西島秀俊:そうですか?(笑)
黒沢:本当に、本当に。今回、久しぶりに再会して、西島君が変わったところをうまく映し出さなければいけないという気持ちで現場に挑んだのですが、いざ撮影を始めると、ほとんど変わっていない。「いかん、変わっているはずだから現場に呼んだんだ」と思うわけですが、気がつくと全然変わっていない感じがしましたね。
●打ち解けてしまいそう
──「クリーピー 偽りの隣人」には原作があります。監督と俳優の関係は、オリジナル脚本のときとは違うんでしょうか。
黒沢:僕はあまり考えないですね。原作は原作で、とても面白く読ませてもらったのですが、いつの間にかもう、それが自分のものだと信じてしまっている。自分の都合ではありますが、ある時点で原作との関係を断ち切ることができているので、あまり気にしなくなりますね。
西島:僕は、撮影が終わってから原作を読みました。どのタイミングで読むかは作品によって変わるのですが、黒沢監督の書く脚本って、それはそれは面白いんですよ。もう、読んでいるだけで「このシーンは面白くなるだろうな」という空気に満ち満ちている。なので、今回はあえて原作は読まずに台本だけで現場に参加しました。
──監督と俳優には「保つべき距離」があると思いますか?
黒沢:僕は、たいていの場合、俳優の方とは距離をとるようにしています。もともと人見知り、ということもあるのですが、あまり素顔を知ってしまうと、現場で見ていて恥ずかしくなるんですよ。「こんなことしなくてもいいんじゃない?」と思ってしまう。こちらからお願いしているにもかかわらず、です。