ただ唯一、西島君とだけは打ち解けてしまいそうで危ない(笑)。「君付け」で呼んでいるのは、実は西島君だけです。子役でも「さん付け」ですから。
「ニンゲン合格」で出会って以降、向いている方向は違ったのかもしれませんが、同じようにキャリアを重ね、お互い少しずつ幅を広げていったよね、という意識がきっとどこかにあるんでしょうね。
西島:僕にとって黒沢監督は出会った頃からすごい監督で、どんどん上に行かれているので、ただただ、すごいなと思って見上げています。
こんなことを言うのはおこがましいのですが、「映画ってこういうものではないか」とぼんやりと考えているものが、黒沢監督とは近いのではないか、と勝手に思っています。言葉にするのはなかなか難しいですが。
黒沢:撮影現場の人間関係って、作品のいたるところに映ってしまっている気はしますね。それは俳優さんだけでなく、スタッフとの関係も同じです。だからこそ、あまりなれ合いの関係になりたくない。必ず作品に出てしまいますから。
──それぞれが、別の作品に取り組んでいるときは、気になるものなんでしょうか?
黒沢:めちゃくちゃ気になりますよ。「こんな役をやるのか、悔しいな」と思う場合もあれば、「僕だったら、こうはしないんだけどな」と思う場合もある。両方ですね(笑)。冷静ではいられないですね。何人かはそういう俳優さんがいらっしゃいます。特にデビューした頃に主演して下さった方は、やっぱり気になります。嫉妬もします。
西島:僕は正直、黒沢監督のほかのどの作品にも「出たかったな」と思っています。ただ、黒沢組は毎回すごい方が出ていらっしゃるので。「いつか、いつか」と思いながら、仕事をしているところはありますね。
黒沢:近年はテレビのさまざまな番組にも出ていらっしゃって、とても嫉妬なんていうレベルではないですけどね。僕の知らないところで、バラエティー番組などにも出演されていて、受け答えがこんなにうまいのか、と本当に驚きます。変に慣れていない感じが、実にうまい。