●題名にSTAP含む論文に注目

 その論文は、独ハイデルベルク大学の大学院生ジー・ヤン・キム氏らが専門誌「生化学・生物物理学研究コミュニケーション」電子版に3月10日付で発表したものだ。題名は「修正STAP条件はジャーカットTリンパ球において多能性か細胞死、どちらかの運命に決まることを促進する」。確かに題名には「STAP」が含まれている。

 また、この対談が行われたことを報じた「週刊現代」6月4日号も、

「ドイツの名門、ハイデルベルク大学が、小保方さんたちが行った実験とは異なる方法ではあるが、免疫細胞の一種に刺激を与えるとSTAP現象が確認されたと発表した」

 と書いている。しかしキム氏らの関心は、小保方氏らの論文の検証や応用ではなく、がん細胞と酸との関係だ。

「ジャーカットTリンパ球」というのは免疫細胞の一種で、白血病の研究などに使われる細胞株のこと。キム氏らがこの細胞を弱い酸にさらしたところ、8時間以内に細胞死が見られた、と論文は記す。細胞を弱い酸にさらす手法は、小保方氏らがSTAP細胞を生成させたと主張したやり方そのものだが、その手法では、あらゆる細胞になる能力(多能性)を示す目印(マーカー)とされる「OCT4(オクトフォー)」の発現は見られなかった。

 キム氏らは本文ではっきりとこう書いている。

「STAPの手順によって見られると私たちが期待したこととは対照的に、OCT4タンパク質があるという、確実なシグナルは観察できなかった」

 また、冒頭の「要約」でもこうまとめている。

「一般的に、酸処理はジャーカットTリンパ球に対して細胞死を起こす状況をもたらす。このことはOCT4発現とは関係なく起こる」

 ちなみに、OCT4というタンパク質があったことは、その細胞が多能性を持っていることの「必要条件」にすぎず、多能性を証明したことにはならない。多能性を持つことの「十分条件」を満たすためにはテラトーマ法やキメラ法と呼ばれる実験が不可欠だが、キム氏らの研究ではそもそも実施されていない。

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