被害が大きかった熊本・益城町の保健福祉センターに配置されたMP(撮影/辰濃哲郎)
被害が大きかった熊本・益城町の保健福祉センターに配置されたMP(撮影/辰濃哲郎)
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脇に張られたテント内には、市販のかぜ薬や胃腸薬も並べられ、被災者の相談窓口も設置された。薬剤師が終結する旗じるしでもあった(撮影/辰濃哲郎)
脇に張られたテント内には、市販のかぜ薬や胃腸薬も並べられ、被災者の相談窓口も設置された。薬剤師が終結する旗じるしでもあった(撮影/辰濃哲郎)

 薬局機能を持つモバイル・ファーマシー(MP)が、今回の地震で医療のハブとして機能した。今後さらに配備されれば災害医療が変わる。

 大分県薬剤師会の伊藤裕子理事は、思わずフェイスブックのメッセージ掲示板に書き込んでいた。

「助けてください!」

 熊本地震の前震が起きた翌日の4月15日、伊藤さんは、キャンピングカーを改造して薬局機能を持たせたモバイル・ファーマシー(MP)とともに、被害の大きかった益城町に駆け付けた。だが、16日未明の本震で、乗っていた薬剤師2人がけがを負い、バッテリーケースやテントの支柱が破損した。

 伊藤さんのSOSに呼応したのは、宮城県薬剤師会の山田卓郎副会長ら2人だった。災害の“秘密兵器”と呼ばれるMPを開発した当の本人たちだ。仙台市から飛行機とレンタカーを乗り継いで、翌日には現地入りを果たす見事な連係プレーだった。

 東日本大震災を経験した山田さんらが、医薬品を積み込み、調剤できる薬局機能と薬剤師を一体化させたMPを全国で初めて導入したのが震災翌年の12年9月だ。

 医薬品を小分けする分包機や電子天秤など調剤機器を搭載し、300~500品目を収納できる医薬品棚と引き出しも備えた。被災地に迷惑をかけずに自己完結できるためのトイレやベッド、シャワーも完備している。

全国から応援に駆け付けた薬剤師らは、このMPのもとに配置された。仮設診療所の医師が発行した処方箋をMP内で調剤して、その場で患者に服薬指導をして手渡すことができた。

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