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『ニール・ヤング』から『ハーヴェスト』までの初期四部作と実験的映像作品のサウンドトラック・アルバム『ジャーニー・スルー・ザ・パスト』につづいてニールは、ソロ・アーティストとしては初のライヴ作品ということになる『タイム・フェイズ・アウェイ』をリリースしている。1973年秋のことだ。
サイド1=5曲、サイド2=3曲、全8曲の構成(CD化はまだ実現していない)。ピアノの弾き語りで歌われる「ラヴ・イン・マインド」は71年の録音だが、それ以外の7曲はすべて、60回以上もステージに立ったという73年春のツアーで残されたものだ。『ハーヴェスト』と「ハート・オブ・ゴールド」の大ヒット以降、最初の本格的なツアーであり、注目度はかなり高かったに違いない。しかも、バックを務めるのは、同作品に貢献したミュージシャンたち、ストレイ・ゲイターズである。
ところが、このツアーでニールは、「ハート・オブ・ゴールド」、「シナモン・ガール」、「ザ・ローナー」、「オン・ザ・ウェイ・ホーム」などは演奏しているものの、アルバム『ハーヴェスト』に重点を置くことはせず、プログラムの大半を新曲/未発表曲で固めていた。また、レスポールやホワイト・ファルコンではなく、まったく似合わないと思うのだが、フライングVを弾くことも多かったという。こういったこともまた、「ハート~」が全米1位を獲得したことによる状況変化への彼らしい反応だったのだろう。
『タイム・フェイズ・アウェイ』に収録されているのも、すべて新曲/未発表曲。「ハート~」のライヴ・ヴァージョンを入れればもっと売れるかもしれない、などといったことはまったく考えない。それが、ニール・ヤングなのだ。
アルバムに残されたオーディエンスの反応からは、落胆のようなものも伝わってくる。ストレイ・ゲイターズの要だったケニー・バットリィが途中で離脱し、ジョニー・バルバータと交替したというエピソードの背景にも、その「落胆」があったはずだ。曲の出来に関しては評価が分かれるかもしれないが、自伝的な「ドント・ビー・ディナイド」、クロスビー&ナッシュが加わった「ラスト・ダンス」など、ニールの歩みを語るうえで見逃すことのできない曲も少なくない。[次回7/8(月)更新予定]
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