それ以来、女性が信じられない。現在、「彼女いない歴=年齢」を更新中だ。合コンの誘いを受けても断り、一度も行ったことがない。

「お見合いって全然アリです。親とか、自分をよく知っている人から紹介されるわけだし。第一、お見合いで嘘はつけないですよね。だから信用できる。合コンよりずっといい」

 ユウトさんのように「誰とも付き合ったことがない」人の割合は、未婚20代の男性で41.6%、女性で26.7%を占める(リクルートブライダル総研「恋愛観調査2014」)。

 婚活支援サービスを手がけるパートナーエージェントの丸尾千扇さんによると、「恋愛経験がない」「自信がない」という20代の会員が増えているという。そのため同社では、コンシェルジュが婚活者に寄り添い、手厚い支援を提供している。例えば異性から「ノー」を突きつけられて落ち込んでいたら、「それは失敗ではなく経験と呼ぶんだよ」と励ます。

「かつては寿退社で職場の女性が入れ替わり、自動的に結婚相手が見つかった。だが今は、自分から動かないと結婚できない。結婚相談所は料金の高さなどから20代にはハードルが高い。だから、お金も時間もかけずに確実性が高い“お見合い”に期待するのでしょう」(丸尾さん)

●夢は地元でゆっくり

 別の理由でお見合いを希望する20代もいる。都内の大学に通うタケシさん(21)は、大学卒業後は、地元・青森での就職を望む。一緒に青森に来てくれる女性を東京で見つけるのは難しいと考え、就職後すぐに、地元でお見合いするつもりだ。

 通っているのはいわゆる難関大学。同級生たちは、大手広告会社や総合商社を目指すが、タケシさんは明るく言い切る。

「そういう会社って、給料高くてもめちゃめちゃ忙しいじゃないですか。僕はそれより、ゆっくり暮らしたい。お金は最低限必要な分だけでいい。自然に囲まれた田舎のほうが、子どもものびのび育つからいいんです」

 タケシさんの父も、同じ理由で地元に戻った。父は、母の写真を携帯電話の待ち受け画面にするほどの愛妻家だ。

「両親が理想です。恥ずかしくて言えませんけど」

 26歳までに結婚して、子どもができてもラブラブの夫婦でいよう。父から譲り受けた車でドライブに行こう。夢は膨らむ。

 欲しいのは、他人が羨むような劇的な何かではない。ただ等身大の幸せだ。不確かな未来の中に、今、20代は、「お見合い」という夢を見ている。

(文中カタカナは仮名)
AERA 2016年2月8日号

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