「新規参入のスピードに違反業者の摘発が追いついていない。価格競争によって削られているのは運転手の賃金で、労働条件は年々悪くなっています」
運転手は、少しでも多く稼ごうとすると数をこなすしかなく、必然的に過労状態に陥る。国土交通省によると、運転手の健康状態に起因するバスの重大事故の発生件数は02 年が17件だったのに対し、13年には57件に増えた。
危険なバスをどう見分ければいいのか。東京海洋大学の寺田一薫教授(交通政策)は「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を目安に挙げる。バス会社の安全管理体制をチェックして1~3の星で格付けする制度で、日本バス協会が始めた。
「問題はツアー会社も出発直前まで、どのバス会社で運行するか把握していない場合があること。予約時に問い合わせてみるといいでしょう」(寺田教授)
旅程に余裕があるツアーを選ぶことも大事という。長時間の日帰りバスツアーなど、運転手の負担が大きい旅程は、リスクが高まるからだ。
利用者にとって、運賃が安いに越したことはないかもしれない。それでも、比較サイトを見るときに「なぜこんなに安いのか」を考えることが、利用者に求められている。
※AERA 2016年2月1日号より抜粋