長年、男女の脳の違いを研究してきた、脳科学者の黒川伊保子さんはこう語る。
「夫婦はそもそもすれ違うようにできているのです」
真逆な感性をもった男女ほどひかれ合う。例えば、夏場の寝室のエアコン温度をめぐるバトル。どちらかが「暑い」とエアコン温度を下げると、もう一方は毛布にくるまって震える。
「暑さに強い遺伝子と寒さに強い遺伝子を持つ者がつがえば、仮に地球が温暖化したり寒冷化したりしても、子孫が生き残る可能性は高くなる。そうした原理が夫婦の間には働いている」
脳の形も男女では違う。女性脳は、右脳と左脳を結ぶ脳梁(のうりょう)が男性脳より太く、左右の脳の連携が良いため物事を文脈でとらえられる。近くにあるものに目がいき、わずかな変化を見逃さず、察する能力が高い。これに対し男性脳は、目の前の細かいものにとらわれず、大きな世界観を構築できる。この違いが夫婦の感情の行き違いを生む。
「夫の言葉で、妻が最もイラつくのが『言えば、やったのに』。私がこんなに大変なのに、なんで察してくれないの?と女性はイラだちますが、男性脳に女性並みの“察する力”を期待することは難しいのです。分担したい家事や子育てがあるときは率直に伝えることです」
※AERA 2015年10月19日号より抜粋