深く関われば関わるほど、地域ではこんなことを言われた。

「復興ブームと共に去っていった人と同じか。覚悟を決めろ」

 一時は仮設住宅に入居することも考えた。しかし、渡邉さんが最後に出した答えは違った。

「事業はやめない。でも、定住はしない。さまざまなプロが関わらないと商品はできないし、売れない。私の強みは点をつなぐことだからです」

 東北の拠点は、地元のプロジェクトのビジネスパートナーの自宅になった。その人が家族と共に住む広い一軒家に居候する。帰れば、本当の家族のように迎えてくれる第2の実家だ。

 並行して東南アジアでは女性の起業を支援。地方と途上国をつなぎ、社会を変えるビジネスを生み出したいと考える。日本財団と国際協力機構の主催を取り付けて、9月末には、アジアやアフリカ、中米の女性起業家を招いたフォーラムを東京・渋谷で開く。

「今後、結婚や出産といったライフステージで拠点の比重は変わるかも。でも、まだどこかに骨を埋める気はありません」

AERA 2015年9月14日号より抜粋