ミサさんは現在、きっちりとした仕事ぶりが評価され、自分に合った居場所を見つけられ胸をなでおろしている。

「お姉ちゃんなんだから」。その呪縛は、長女の恋愛や結婚にも大きく作用する。愛知県出身で都内で働くチカさん(50)は、生まれたときから「長女という役割」を背負わされてきた感覚がある。38歳で東京に転勤し、ひとり暮らしを始めたとき、

「自分だけの時間、自分だけの空間があって『長女でない自分がいる』と新鮮に感じました」

 2人姉妹の長女。子どもの頃から母にはこう言われ育った。

「お姉ちゃんなんだから、最後は家のことをやってもらいます」

 5歳下の妹は嫁いだら「外の人」になるので、最初から枠外だ。チカさんは何をするにも親の許容範囲を推し量り、恋愛中も頭を離れなかった。

「男性と出会っても、長男なのか、次男なのか。何人きょうだいなのかが気になって。結婚のハードルを上げていました」

 長男は論外。ターゲットとなるのは次男や三男だが、そう簡単に出会えるものでもない。加えて、彼らは家のこととなると役に立たなかった。

「(長子のような)当事者意識がないので、使えないんです……」

AERA  2015年8月17日号より抜粋