休みの日は仕事を忘れてのんびり過ごしたい……と思いつつ、ついつい頭の片隅で考えてしまうもの。仕事を離れてしっかり休むために、専門家に「頭を空っぽにする方法」を聞いてみた。
まず、ずばり『頭を「空っぽ」にする技術』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)の著者で、企業のコンサルティングやコーチングを手がける藤井義彦氏を訪ねた。
誰にでもできる方法として藤井さんが勧めるのが、座禅のときに息を整えるために行われる「数息観」と呼ばれる呼吸法だ。自分の息の数を数えながら、呼吸することをいう。
例えば、やり方はこうだ。まず目を半開きにして、ゆっくり息を吸いながら、「ひと~」と心の中でつぶやく。そして、できるだけ長く息を吐きながら「つ~」。同様に、吸いながら「ふた~」、吐きながら「つ~」、吸いながら「みーっ」、吐きながら「つ~」…というように、数を増やしながら、ゆっくりと呼吸する。
早速やってみた。数を数えることに意識がいくからか、普段ボーッとしているときに浮かんでくる心配ごとやら「あれほしい」「これ食べたい」やらの雑念が、頭の中に浮かぶ暇がない。これってもしや、「空っぽ」になってる?
続いて、心理学系のエッセーも多い精神科医の春日武彦氏のところへ。精神科医師の考える「頭を空っぽにする」とは?
「仕事中心に動いていた精神を解き放ち、抑えつけていた感情や発想などをよみがえらせること。そして『自分らしさ』を取り戻すことではないでしょうか」
「頭を空っぽにする」ことは、精神の解放にもつながるということだ。ところが、心まで空白になるのではないかという取り越し苦労から、頭空っぽ状態に踏み切れない人は多いという。
「頭も心も空っぽになった自分は、休み明けの仕事に適応できないのではと勝手に予想して心配する。心配のあまり、休暇そのものを楽しめない。さらに、休暇を楽しめない自分に自己嫌悪するという悪循環ですね」
これでは頭を空っぽにしてリフレッシュどころか、せっかくの連休が五月病のきっかけにもなりかねない。だが、こうした人にも、頭空っぽ状態を活用できる秘策はあるという。
「休みの前に、切羽詰まっていない仕事の資料や、勉強するべきテーマなどを用意して、頭を空っぽにするオフとの2本立てで連休を過ごすようにすることです」
仕事と休暇をきっぱり切り替えるほうがメリハリはつく。でも、それができる日本人は少数派だと春日さんは言う。
「悩みの種が増えるくらいなら、往生際の悪い、中途半端な休暇を過ごしたほうがいいんですよ」
※AERA 2015年5月4日―11日合併号より抜粋