次世代や社会のためにできることは何なのか。自分の子どもを育てなくとも、それを実践している人たちがいる。
客室乗務員(CA)時代に学んだおもてなしやマナーを生かし、英語研修を行う「オフィスグレース」を立ち上げた、荒井弥栄(やえ)さん(48)は、こんなふうに感じている。
「子育てをしなくても、それを社会的使命として生かす生き方があってもいいのではないか」
仕事は忙しくやりがいもあり、子どもは産まないと20歳で決意した。航空会社で初任給をもらってからずっと、給料の4分の1をさまざまな寄付などに充ててきた。孤児院や恵まれない子どもたちを支援したり、災害の復興支援をしたり。
心からボランティアを「させてくれてありがとう」という気持ちになったのは、30歳でCAを辞め、独り立ちしてからだ。
「海外留学をしてセルフコントロールを身につけ、起業してからビジネススクールで学び、人との出会いの大切さを知った。自分の軸が太くなったことでこの恩を返したいという気持ちが生まれました」
現在は毎月、福島の被災地に行き、居住禁止区域に残されたペットたちの世話をする。児童養護施設で子どもたちの英語の宿題もみる。
親や友達、仕事で出会った人から受けた恩をすべて返すことはできない。自分にできるのは「恩送り」だ。
「人は一人で生まれて一人で旅立つ。だからこそ『あなたがいてくれてありがとう』と感謝できる。そういう出会いを増やしていきたい」
※AERA 2015年4月20日号より抜粋