
「アウトドアの達人社員」
モンベル 企画部課長代理
渡邊千絵(54)
撮影/伊ケ崎忍
アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はモンベルの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■モンベル 企画部課長代理 渡邊千絵(54)
雄大な山々は人々を魅了してやまないが、時に牙をむくこともある。だから山登りのウエアは第一に機能性重視。色も、遭難時に備え、目立つ色であるほうがよい。モンベルの企画部課長代理、渡邊千絵は、そう思う。
40人近くいる企画部の中で、商品全般の色の管理と、女性のウエアやギア(道具)のデザイン管理を任されている。渡邊を含む担当の4人で、社内で出されたアイデアをもとに、商品に合う素材開発から携わり、必要な生地や部品を厳選。縫製方法も指示する。そうしてできる商品は、1年間で700に上る。
「どういう機能をつけるのか、改善するのか、刷新するのか。常に先々のシーズンの分まで同時進行で考えています。山に行くと、つい女性のウエアをじっと観察してしまいますね」
北海道生まれ。父が登山家だったせいか、小さい頃からアウトドア派。オートバイを乗りこなし、スキーやウインドサーフィン、山登りが好き。大学は芸術方面に進み、金属工芸を学んだが、27歳のとき転機が訪れた。
大学卒業後、いったん就職したが、再び芸術を学ぼうとカナダに渡った。しかし、そこはカナダ。日本のモンベルで寝袋やテントなどを一式買いそろえ、現地のアウトドアスクールに参加したところ、はまってしまった。
「挑戦が好き。体を動かすのが大好き」
という渡邊のチャレンジ精神は、アウトドアの達人ぞろいの社内でも群を抜く。雪の槍ケ岳を登り、スノーボードで上から滑降。フルマラソンには26回も出場した。並々ならぬ強い精神力と持久力の持ち主は、仕事でも課題が多いほうが燃えるタイプだ。
「最近はだいぶ落ち着きました。今は夫と自転車でツーリングしたり、自宅近くの生駒山で山走りをしたりするのが休日の楽しみ」
そう軽く言うが、10月は延べ200キロ以上を走った。目指すは12月14日の奈良マラソンだ。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・西元まり)
※AERA 2014年11月17日号