マラソンを走って社会貢献する人たちがいる。チャリティーランナーだ。東京マラソンでも10万円以上を寄付して出場する選手が、2014年大会では約2600人もいた。寄付は総額約2億6580万円に上った。
なぜ大金を払ってまで、と首をかしげる人がいるかもしれないが、いまや世界の大都市マラソンでは「常識」。ロンドンマラソンは13年大会で5300万ポンド(約96億円)の寄付を集めている。
多摩川河川敷で開催されている「PARACUP」も、チャリティー大会の一つ。世界の子どもたちの支援を目的に05年に始まり、収益金は共催するNPO・NGOを通じて寄付される。参加費はランナーだけでなくボランティアも払う。
東日本大震災で親をなくした子どもたちに収益金の一部を寄付するのは「PARACUP SENDAI」。12年に始まった。第3回は昨年10月にあり、仙台空港に隣接するコースでリレーマラソンなどが催された。
海外の大会では、「ファンドレイジング制度」を利用するのが一般的で、日本でも徐々に広がっている。
ロンドンマラソンの場合、まずチャリティーランナーが、大会出場枠を持つボランティア団体に対し、期限までに目標金額を寄付することを約束する。そして「サブスリー(3時間切り)を達成する」といった目標を掲げたうえで、友人などに応援の寄付を募る。目標額に届かなければ、差額は自腹で負担する。
ファンドレイジングサイト「ジャパンギビング」を運営する佐藤大吾さん(41)は、この仕組みが日本の寄付文化を一変させると信じている。
「出場枠欲しさに寄付を呼びかけるというランナーの“欲望”に寄り添った建前がうまい。それをみんなで楽しんでいる。日本では人知れず善行をするのをよしとしますが、いいことはもっと自分から言ってもいい。脱・陰徳の美が鍵です」
※AERA 2015年2月23日号より抜粋