国が取り組む「女性活躍推進」の流れもあり、いまや働きながら出産する女性を支援しようという雰囲気は日本じゅうにあふれている。ワーキングマザー支援は「ダイバーシティー(多様性)推進」の一環だと言われるが、ちょっと待て。「子どもを産まない」という“少数派”の多様性はちっとも認められていない感じがする。
こんなデータがある。マイナビウーマンが昨年10月、男性に対して「子どもが嫌いな女性をどう思うか」を聞いたところ、「悪印象、結婚できないと思う」という答えが過半数だった(22~39歳の社会人男性101人が回答)。男性たちの意見は辛辣だ。
「子どもに優しくできない人は優しくないと思う」(24歳/情報・IT/技術職)、「女性には母性があるものだと思っているから」(32歳/学校・教育関連/専門職)という答えもあった。
こんな社会が影響してか、国立社会保障・人口問題研究所の「結婚と出産に関する全国調査」では、結婚の利点を「子どもや家族をもてる」ことと考える独身女性が10年前から急激に増え、2010年には約半数に達した。そんな空気の中、一番つらいのは結婚していて子どものいない女性だろう。しかも30代になると、さらに周囲の視線は厳しい。
結婚4年目で看護師のCさん(30)は、自分よりも後に結婚した同僚に子どもができると、必ず職場で質問攻めにあう。
「早く産んだ方がいいよ、って不妊治療の大変さまで教えられるんですが、言われなくてもわかっています。本当はキャリアを積みたくて先延ばしにしてきたけど、子どもよりも仕事を取るのかと見られるのは面倒。いつも『授かりものですからねー』と流しています」
今、産んでいない女性たちで、出産への同調圧力を感じている人は多い。産むかどうかを考える間もなく、「いつ産むか」を突きつけられるのだ。
有無を言わせない現在の空気が男女雇用機会均等法の施行直後に似ていると話すのは、『「子供を産まない」という選択』などの著書があるノンフィクション作家の衿野未矢(えりのみや)さん(51)だ。均等法第1世代で、自身も“未産”という立場に悩んだ時期があった。
「均等法の施行直後は、女性が働くことは素晴らしいと、国が旗を振った。結婚は逃げだという空気もあって、たとえ結婚して家に入りたかったとしても働くことを選ばされたところがある。今も同じように、国が後押ししているのに産まないのは個人の努力や決断力が足りず、わがままな女性がやることだと受け止められてしまっている。結婚も出産も一人だけではどうにもできないものなのに」
※AERA 2015年2月16日号より抜粋