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 売り上げ1兆円超えの格安スマホ。「小米」の生みの親は改革開放の申し子で、アップル、サムスン打倒を目指す。

「太土豪了、小米(土豪すぎるぜ、シャオミー)」

 最近、中国のメディアでこんな見出しが躍った。「土豪」とは最近の中国の流行語で「成り金」のことを意味するが、中国ナンバーワンのスマートフォンメーカー「北京小米科技」(シャオミー)の現在の勢いを表すのにぴったりの言葉だ。

「土豪」と報じられたのは、シャオミーが動画サイト「愛奇芸」に18億人民元(約340億円)を出資し、スマホ用の動画コンテンツを共同開発すると発表したからだが、未上場ながら企業価値の時価総額はソニーの約2倍となる5兆円は下らないと評されるシャオミーにとっては、どうということのない金額に違いない。

 成り金もここまでくるとたいしたものだ。創業5年目にあたる2014年の売上高は前年比約2.4倍の約1.4兆円に達した。スマホの世界シェアでも3位に躍り出て、視界にはアップル、サムスンをとらえている。

 シャオミーは10年4月に北京で創業し、高性能のスマホをインターネットで安く販売する手法によって中国で爆発的な人気を集めた。シャオミーの創業者で最高経営責任者、雷軍(レイチュン)氏は新商品の発表会には必ず、スティーブ・ジョブズばりのTシャツにジーンズで現れ、「中国のジョブズ」と呼ばれる。

 創業5年でここまでシャオミーというブランドを定着させた雷軍氏は1969年に湖北省で生まれた。改革開放政策の恩恵を最初に受けた世代だ。海外留学の経験はない。大学卒業後、IT企業に入社し、社長まで上り詰めたが07年に辞任。10年に満を持してシャオミーを立ち上げた。

 中国のジョブズと呼ばれても、「ジョブズは中国に住んでいたら成功できなかっただろう。彼は完璧主義者すぎる。中国では中庸を重んじる」とも語る気の強さもある。確かに雷軍氏はジョブズのように、天才型で孤独を愛するタイプではない。シャオミーには「小米六人衆」と呼ばれるIT各分野の専門家がそろっており、雷軍氏の役割はコーディネーターであり、広告塔的なブランドシンボルである。

AERA  2015年2月9日号より抜粋