未成年との性交渉疑惑に、隠し子訴訟…。相次ぐスキャンダルに揺れる欧州の王室。その背景とは。
英国のエリザベス女王(88)の次男、アンドルー王子(54)が、未成年者と性関係を持ったとの疑惑が浮上した。昨年12月29日にアメリカ人女性バージニア・ロバーツさん(31)が、未成年だった1999年から2002年の間に、アメリカの実業家ジェフリー・エプスタイン氏(62)の指示で王子とロンドンなどで性交渉をもたされたとフロリダ州の地裁に訴状を提出したのだ。
ロバーツさんの父親がエプスタイン氏の邸宅で働いていたとき、彼女は「王子の求めるものすべてに応えなさい」と命じられた。「洗濯物を入れるバスケットいっぱいに性のおもちゃが入っていた」と生々しく当時の様子を描写している。
エプスタイン氏は、08年に少女に売春させた罪で1年半の実刑判決を受けた。王子は氏と親しく交流、釈放後の氏をウィンザー城などに招待している。
英王室は訴えに対し「根も葉もない作り話」として、全面否定する声明を複数回発表。これまでスキャンダルが起きた場合、王室は「有名税」と捉え、相手は金銭などが目的と無視するのが通例だった。しかし、今回は事の重大さを認識したのだろう。
スキャンダルはヨーロッパの他の王室にも波及している。ベルギー在住の女性(48)がスペイン前国王フアン・カルロス1世(77)の娘と主張して認知を求める訴えを起こし、スペインの最高裁に受理された。前国王はスペインが債務危機に直面した2012年に、アフリカのボツワナで高額な象狩りツアーをしたことが発覚して国民の怒りを買った。
また14年には前国王の次女が公金横領に絡む疑惑で王室の一員で初めて法廷に立たされる事態に陥った。国王は14年に異例の存命中の退位に追い込まれ、フェリペ皇太子が即位した。これでいったんは落ち着いたスペイン王室に、今回の訴えは新たなダメージをもたらしている。
大小問わず次々とスキャンダルに見舞われるヨーロッパ王室。背景にはIT技術の進歩と情報化がある。たとえ細心の注意を払っても、王族の言動は瞬く間に国民に知られる。国民の意識も上がり、遠慮なくそれに対して批判を含む反応を寄せるようになった。王室のサバイバルのためには、国民への説明や謝罪など初期対応がますます重要になってきたといえるだろう。
※AERA 2015年2月2日号より抜粋