国産ウイスキー作りの夢を追う“マッサン”と“エリー”の夫婦愛を描くNHK連続テレビ小説「マッサン」が好調を維持している。NHKの櫻井賢チーフ・プロデューサーに、制作にかける思いや裏話を聞いた。

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 ドラマとして何を伝えるか。国境を超えるテーマをやりたい、異文化が交わる題材を、という思いがありました。

 事前取材で、脚本家の羽原大介さんと、日本人と結婚している外国の方に多く会ったんです。彼女たちが日本に対する思いをボディーランゲージも交えて話す表情が実に面白かった。でもそれは外国人のメンタリティーでしか表現できないと思いました。それでヒロインの海外オーディションをすることにしたのです。

 ネットや雑誌で「撮影期間が長いドラマ」とだけ書いて募集したのですが、海外から300人近く、国内あわせて521人の応募がありました。

 送られてきた動画を見続けました。海外ではオーディション文化が根づいているので、みなさん堂々と自己PRされてくる。朝の番組にはコレステロール値が高すぎると思える(笑)刺激的なアピールをされる方もいました。実はこの段階ではシャーロットは「残しておこうか」ぐらいの印象でした。日本語がまったく話せない人は、僕の中で想定していなかったんです。

 ところがカメラテストで来日した彼女の演技を見たとき、その潜在能力に息をのみました。「すごい!」。芝居に嘘がない。相手とのキャッチボールで感情がリアルに動いている。みんなが彼女の芝居でドラマを撮りたいと思いました。

 でも、少し冷静になったら、過酷な現場の「朝ドラ」のヒロインを日本語が話せない外国人にできるのかと。決定に至るまで時間はかかりました。

 玉山君の支えも大きい。なんてこの人は優しいのだろうと思う。あらゆる共演者に対して配慮ができる人です。

AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋