
一貫教育に取り組む小中学校は、全国に1130校。「人間関係固定化」が言われるが、成果も上がっていた。
カラフルな私服姿の3年生がマウスを操り、楽しそうにパソコン上に絵を描く。隣のパソコン教室では、大人びた顔つきにブレザー姿の9年生がロボットを動かすプログラミングと格闘中。合同授業では上級生が下級生に教えることもある。
これが、茨城県つくば市の小中一貫校「春日学園」の日常だ。3年生は小学3年生。9年生は中学3年生にあたる。同市は2012年から市内全域を15の「学園」に分けて小中が連携する一貫教育を導入していて、春日学園は唯一の施設一体型。1~9年生まで1450人が学ぶ。
小中一貫教育の目的の一つは、「中1ギャップ」の解消だ。中学では勉強も難しくなり、人間関係も大きく変わる。小学校時代に抱えた問題は中学では共有されず、深刻化したり、学習意欲や自尊感情の低下、いじめ、不登校につながったりする。
小中一貫教育では、双方の教師が情報を共有し、9年間を見通したカリキュラムで指導。春日学園は、心身の発達に合わせた「4・3・2制」を採用し、5年生からは教科担任制、中1にあたる7年生からは制服着用と部活が始まる。ほとんどの教師が小中両方の教員免許を持ち、小学校でのつまずきを持ち越さない指導も可能だという。
市内の公立小中学生に昨春行ったアンケートでは、小学生の98.1%、中学生の95.2%が「勉強した内容がよくわかる」と答え、前年度に比べて平均5ポイント以上伸びた。特に伸びが大きかったのは7、8年生で、教育委は「一貫教育で学習面における中1ギャップが解消された表れ」と分析する。
文部科学省が今年5月に実施した初の全国調査でも、施設一体化や「4・3・2制」などを取り入れ、一貫性を高めた学校ほど、学力が向上し、いじめの減少や中1ギャップの解消に効果があったという結果が出た。
「人間関係が固定化する」「6年生が、リーダーの自覚を持つことで大きく成長する機会が奪われる」といったデメリットも指摘されるが、政府は小中一貫教育を制度化する方針だ。教職員の負担の増大などの課題の克服がカギとなる。
※AERA 2014年11月17日号より抜粋