セックスレスの定義は「1カ月以上性交渉がない」こととされている(日本性科学会)。ただ、仮にもっと頻度が少なくてもコンスタントに夫婦間のセックスがあり、関係が和やかなら、それはそれでその夫婦のペースだろう。
問題は周期でも回数でもなく、夫婦のどちらかが「あれ、最近おかしい?」「このままじゃまずい?」と不安を感じることではないだろうか。
金融機関勤務のユウコさん(39)は、結婚5年目に初めて夫と冷戦状態に陥った。
「夫の態度が急によそよそしくなったんです。話しかけても冷たいし、私を見る表情も硬い。休日は私を避けるように趣味のサイクリングに出かけてしまう。もちろん夜はさっさと寝てしまいます」
なにか不満があるのか聞いても夫は答えず、お茶をにごすだけで、ユウコさんのイライラは募っていった。ある日、ベッドのシーツを洗濯しながらハッと原因に思い至った。
「夫からのセックスの誘いを続けて2度断ったことがあったんです。私が昇進する前後でした」
その頃、ユウコさんは深夜までの残業や夜の会食も増えて疲れ、緊張感から休日も仕事のことが頭から離れなかった。ベッドに横たえた体に夫が触れてきた。とっさにぶつけた言葉は「ムリ!」「カンベンしてよ!」と、身も蓋もなかったという。
その後、仕事に熱中すると、体力的にも時間的にもなおさら余裕がなくなった。「忙しいんだから」という気持ちから、セックスを拒否した非を夫に詫びたくない意地も出てきて、険悪ムードとセックスレスはズルズルと半年続いた。
忙しい共働き夫婦にとって、安らぎのある家庭をつくるためにお互いの仕事や生活への理解は欠かせない。しかし、こと「性」になると、異性なだけにわかり合えない面も多く、ささいな感情の行き違いからセックスレスを引き起こしてしまうこともある。
前出のユウコさんの場合、「ある人」への相談が解決の糸口となった。仕事での昇進からくる緊張が解けた頃、ようやく気持ちに余裕が出て、「このままじゃまずいかも」と夫との微妙な不和に対峙した。この悩みを相談した相手が正解だった。
「今も友達づきあいをしている元彼です。セックスの話も気楽にできるし私の短所も長所も知っている。それに男性心理は男性に聞いたほうが間違いないと思って」
あまり深刻にならずにケロッと誘惑してみろ、というアドバイス通り、ユウコさんは休日に夫を映画に誘った。映画館に着いてからR―18指定の官能映画だと知り、夫はギョッとしたが、上映中にユウコさんが「私もあなたが欲しい」とささやくとニッコリ。手をつないで映画館を出て、その夜はめでたくセックスレス解消となった。
「女性が深読みするほど男は複雑じゃないよ、と元彼に言われて気楽に構えた。だからうまくいったんですね。女友達にも相談したけど、とことん話し合えとかカウンセリングを受けろとか、みんなアドバイスが硬いんです。夫の性格上それは逆効果だなと直感したので」
※AERA 2014年10月27日号より抜粋