
「就活」や「婚活」に続き、「妊活」という言葉が一般化されつつある。かつて妊娠は「自然に」するものだった。だが、働く女性が増え、晩婚化が進み、不妊に悩む人が増えたいま、食事や体調の管理、不妊治療などを通して、「きちんと備えて」妊娠しようという女性は多い。
ただ、職場では子育て中のワーキングマザーをサポートしようという動きは市民権を得つつあるが、妊娠前の女性をサポートする意識はまだまだ薄い。「目に見えない」問題で、高度なプライバシーも関わるだけに難しい。妊活女子たちは職場で人知れず複雑な葛藤を抱えている。
東京都渋谷区に住む会社員の女性(38)は、昼休み、仕事の合間を縫ってカップ麺をかき込んでいた同僚の男性に、上司が言ったセリフにドキッとした。
「そんなもんばっかり食べているから、子どもができないんだ」
冗談半分で、新婚の部下の健康を気遣って言ったことだろうが、無性に腹が立った。この女性自身、妊娠を望んで1年経ってもできずに病院へ。その後、原因不明の不妊という診断で、タイミング法から人工授精に切り替えたところだった。子どもができない理由を安易に食生活のせいにされるなんて、「何も知らないくせに」と複雑な気持ちになった。女性は言う。
「オフィスはハード面の環境もひどいです。分煙だけど、煙は十分漂ってくるし、夏のエアコンは寒すぎてキツイ。狭い部屋で風邪をひいても、マスクもしないでせき込む人がいる。会社を辞めたいとは思っても、仕事を続けなければ、不妊治療のお金もない」
だが、妊活中の女性たちは“大っぴらなサポート”を求めているわけではない。オフィスで働く女性を対象に「シティリビング」が7月に行ったアンケートでは、職場で不妊を話題にできるという人はわずか8.1%。編集長の山内綾子さんはこう話す。
「急に休まなければならない、治療に明確な終了期限がないなどの理由から、不妊の悩みは職場で相談しづらいし、理解されづらいという声が多い」
当事者からのこんな声もある。
「職場では、絶対に言いたくない。万が一、子どもを授からなかったら、可哀想と噂され、負けたことになりそう」(奈良市・病院勤務の女性・39歳)
※AERA 2014年10月20日号より抜粋