アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回は大同特殊鋼の「ニッポンの課長」を紹介する。

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■大同特殊鋼 知多工場製鋼室長 久村総一郎(40)

 巨大な火柱のような鋼が44メートルの高さから、ゆっくり下へ引っ張り出される。

「鋼の温度は1000度を超えます。体を真正面に向けていると、熱くて立っていられません。ですから」

 そう言って、大同特殊鋼知多工場の製鋼室長、久村総一郎(6月1日付で経営企画部製品戦略室長に異動)は、半身に構えた。右半身が熱くなったら、左半身を熱い方へ向ける。周囲をヘルメットをかぶった男たちが、慌ただしく動き回る。

 この「連続鋳造」の工程で鋼は少しずつ冷やされ、固まる。それを延ばしたり、プレスしたり。できた製品は、暮らしや産業のいたるところに使われている。例えば、自動車のギアやシャフト、航空機のジェットエンジンシャフト、火力発電所のガスタービンだ。原料は鉄鉱石ではなく、鉄スクラップ。炉内で雷のような電気を浴びせ続け、スクラップを溶かす。不純物を除いた鉄にマンガンを加えると硬く、ニッケルを加えれば粘り強く、クロムを加えるとさびにくくなる。用途に応じて成分を調え、特殊な鋼がつくられる。

 名古屋工業大学生産システム工学科卒。入社すると、知多工場の製鋼部門に配属された。鋼と向き合う職場は職人気質が強く、

「危険も伴う場ですから、気性の荒い工員さんもいます。なじむのに苦労した」

 自分のアイデアで作業効率をアップさせたことがある。工員たちの見る目が変わった。

「現場は家族。仲間を見捨てたりしない。義理人情がある。その一員になれた」

 2年前に製鋼室長を任され、関連会社を含めると400人を束ねた。電力を大量消費する産業だから、工場は電気代の安い夜間を中心に動く。だから、毎日午前7時前に出勤し、夜勤明けの工員たちを迎えた。

 趣味はキックボクシング。練習中は仕事のことを一切忘れる。

「考えていると、パンチをくらいますから」(文中敬称略)

大同特殊鋼「打て、燃える鋼を」大同特殊鋼知多工場製鋼室長 久村総一郎(40)撮影/写真部・東川哲也
大同特殊鋼
「打て、燃える鋼を」

大同特殊鋼
知多工場製鋼室長 久村総一郎(40)
撮影/写真部・東川哲也
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※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(ライター・岡本俊浩/写真・写真部 東川哲也)

AERA  2014年7月7日号