乗務前のクルーミーティングでは、列車についての基本情報、注意点、身だしなみなどを互いに確認する。制服とメークは航空会社のキャビンアテンダントを思わせる(撮影/写真部・工藤隆太郎)
乗務前のクルーミーティングでは、列車についての基本情報、注意点、身だしなみなどを互いに確認する。制服とメークは航空会社のキャビンアテンダントを思わせる(撮影/写真部・工藤隆太郎)
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 新幹線に乗ると、ワゴン販売も楽しみの一つ。やさしくほほ笑んで客席を回ってくるパーサーとは、どんな仕事なのか。その裏側のぞいてみた。

「足元注意よし!」「身だしなみをチェックします」「本日の売り上げ目標は……」

 東京駅に近いビルの一室で、東海道新幹線に乗務するパーサーのクルーミーティングが行われていた。

のぞみ」は4人、「ひかり」は3人が一組になり、乗車する列車の発着時刻、注意点、持ち物、販売目標などを確認し合う。列車の入線時刻が近づくと、出発カウンターで点呼を受け、「行ってまいります!」と出発する。

 東海道新幹線のパーサーは東京と大阪に計約800人いる。そのうちの約600人はジェイアール東海パッセンジャーズの社員で、ほかはアルバイトだ。入社2年目以降、試験を受けて車掌業務資格を取ると、グリーン車での改札業務や全ての車両において車内巡回を行い、乗客への案内業務を行う。

 よく見ると、胸につけているバッジの色が違う。エンジはアシスタントパーサーで、入社して最初につけるバッジだ。緑は車掌業務資格を持つパーサー。さらに青のシニアパーサー、クルーの責任者である紫のチーフパーサー、黒のインストラクターへと昇格していく。赤はアシスタントクルーと呼ばれるアルバイトで、ワゴン販売専属だ。

 のぞみの場合、乗務する4人のパーサーのうち、2人が車内販売を担当する。11号車にある車販準備室から、それぞれ1号車、16号車に向かってワゴンを押し、平均3往復する。数十キロのワゴンを操るには体力も必要だ。ほかの2人はグリーン車を担当し、おしぼりを配ったり、改札業務を行う。

 ワゴンに載せる商品は種類も積載箇所も決まっているのだが、より多くの乗客に販売するには、各自の技量が必要不可欠。乗客とアイコンタクトをとり、コミュニケーションすることで要望を素早く察知し、スムーズに応対しなければならない。そのためには経験も必要だ。
AERA 2014年10月6日号より抜粋