中学受験では、入試傾向の違いから、以前は私立と公立を併願する生徒は少なかったが、ここ数年増加しているという。
「2014年は都立10 校で107人が入学を辞退しており、私立と併願していることが窺えます。難関大学への実績も堅調なので、公立中高一貫校が入試を行う日にめぼしい私立の入試がなければ、併願する生徒も増えてきました」(安田教育研究所・安田理代表)
小石川(東京都立)1年の田村俊郎君(仮名)は、宝仙学園・理数インターを併願した。小学校4年次に栄光ゼミナールに入塾し、理科と数学は難関私立、国語は公立中高一貫校コースで学んだ。筆記が苦手なので、新聞記事を200字に要約する練習を重ねたほか、過去問から小石川の類似問題をピックアップして100問以上こなすなどして合格を勝ち取った。
「私立の勉強も役立ちました。たとえば適性検査では、私立で身につけた算数の能力を、言葉で表現させるような問題が出題された」(俊郎君)
子どもだけに勉強させるわけにはいかないと、両親も漢字検定の2級に挑戦。そろって合格を果たした。
早稲田進学会を主宰する大島茂塾長は、公立中高一貫校を狙う親は、併願私立に対する期待値も高いという。
「以前のようにダメ元とか、地元の公立よりはという理由が減り、教育内容に共感する親が増えてきた。そういう親は、併願先として偏差値60程度の私立を狙うケースが多い」
とはいっても、公立中高一貫校の倍率は平均7~8倍。併願する際は、不合格を想定して学校選びをすることが肝心だ。
「地元中学で良ければお試しで構いませんが、そうでなければ、私立入試の方が圧倒的に勉強量が必要なので、早くから準備した方がいい」(栄光ゼミナール広報室・山中亨課長)
同じく小石川1年の上原悠人君は小石川を本命にしつつ、私立の合格も目指した。「公立中高一貫校は多様性が魅力でした。偏差値では測れない一芸に秀でた子どももいる。複数の学校を見学しましたが、小石川の授業がおもしろそうで雰囲気も子どもに合っていると感じました」(父親の浩之さん)
地元中学の選択肢はなく、万一に備えて小学4年から私立入試塾へ通った。浩之さんは大阪へ単身赴任中で、悠人君と毎日のようにラインで連絡し、日々の出来事を尋ねたり、作文の課題を出したりした。週末は毎週帰宅し作文を添削した。
「親が子どもとかかわれる時間は短い。できるだけのことはしてあげたいと」(浩之さん)
小石川の合格は浩之さんの赴任先に家族で旅行中、ネットで確認した。
「厳しいと感じたこともあったけど、合格できたのはお父さんのおかげ。今は感謝しています」(悠人君)
※AERA 2014年8月25日号より抜粋