

テクノに合わせ、うどんを踏む──そんなイベントが6日、東京・南青山のレストランバーで催された。その名も「テクノうどん」。DJブースの前には、ブルーシートを敷いた「うどん踏みスペース」。客は靴を脱ぎ、裸足でビニール袋に入ったうどん生地を一心不乱に踏みしめる。
「おもしろーい!」
あちこちから歓声があがる。10分も踏み続けると、生地がこね上がる。フロアの一角にはキッチンがあり、その生地を持っていけば調理してくれる。
「真面目な反対運動もいいけれど、笑いで抵抗できればと思ったんです」
と話すのは、イベント主催者の一人で運営統括の手塚新理(しんり)さん(25)。東京・浅草のあめ細工専門店「アメシン」の代表だ。手塚さんらが抵抗しているのは、ダンス営業への規制だ。
ダンス営業は風俗営業法で「風俗営業」の一つと規定され、公安委員会の営業許可が要る。近年、騒音や暴力事件の発生に対する周辺住民の苦情や不安を背景に、無許可営業のクラブが次々に摘発され、廃業する店が相次ぐ。「ダンス狩り」とも呼ばれるこの摘発の件数は、2007年に全国で3件だったのが、11年には22件に増えた。
風営法の施行は戦後間もない1948年。当時のダンスホールは売春の温床になっていたから、規制も仕方なかったのかもしれないが、今はダンスが中学校の必修科目という時代である。ダンスが風俗を乱すという考え方は、あまりに時代錯誤だ。
踊る自由を法律でしばるのか。音楽家の坂本龍一さんらは昨年、法改正を求める15万人分の署名を国会に提出した。一方、「テクノうどん」は“うどん”で抵抗の意思を示す。時代遅れな法律への皮肉が、うどんにまぶされている。
仮に風営法違反で当局に摘発されそうになったとしても、「うどんをこねているだけでしょ。悪いことはしてないし、摘発されても困ります」と反論できる。でも、なぜ“うどん”だったのか?
「そばより安いし、生地を切るのも簡単。『うどん踏み』というゴロもいい」(手塚さん)
※AERA 2014年7月28日号より抜粋