男女ともに育児休暇の取得率が高く、育休中も収入の80%が支払われるなど、子育てに関する制度が充実しているスウェーデン。その根底には、男女平等への高い意識がある。
スウェーデンでは、高度経済成長期の労働力不足から70年代に女性の就業率が急上昇した。共働きを想定して、世帯に課していた所得税を個人に課し、「両親保険」を整備。子どもの預け先が不足して待機児童が問題化したが、就学前学校を増やして解決した。
日本ではこうした政策は「少子化対策」の一環だが、
「出生率は結果に過ぎず、スウェーデンの政策の目標はあくまで男女平等。大臣がそれぞれの担当部門で、男女が同じ権利を確保するための具体的な政策に責任を持って取り組んでいる」(教育大臣次官)
働き方や家族形態がどうであろうと、子どもを育てる両親を支える体制をスウェーデンは徹底している。家族形態の7%にあたる同性婚などの親とその子どもも例外ではない。
イタリア人のジョアンナ(40)とスウェーデン人のアンナ(38)のレズビアンカップルは、2000年にローマで出会い、多様な家族形態に寛容なスウェーデンで04年に結婚した。精子提供の人工授精で長女(5)をジョアンナが、次女(3)をアンナが出産。社会保障の面で異性婚との違いはなく、2人とも両親保険を利用して育休をほぼ半々に取った。
「どうやって産んだの、と聞かれることはあるけど、同性両親の子育てはストックホルムでは珍しくない。他の家族と同じように人間関係がうまくいかないことだってあるし、うちは特別な家族だからラッキーだと子どもたちに思われたくない。それもひっくるめて幸せです」
とアンナ。子どもたちは「ママジョ」「ママアンナ」と呼びかける。
父親の役割って何だと思いますか? 2人は顔を見合わせた。
「意味がわからない。それが答えなのかもしれないけど」
日本は「大黒柱と良妻賢母」から「イクメンとワーキングマザー」の時代になったが、その呼び方は私たちが「性別の固定観念」にとらわれ続けていることを示している。
日本でいう「ワークライフバランス」を、スウェーデンでは「ライフパズル」と呼ぶ。社会の役に立つ仕事、子どもの成長の発見、かけがえのない自分の時間……どれもあきらめずにパズルを組み立てるチャンスは日本の男女にもある。ほんの少し周囲の理解や助けを得られたら、パズルはきっと完成する。(文中敬称略)
※AERA 2014年6月2日号より抜粋