人をつないだり、情報を発信したり……ビジネスで必須とも言えるスキル「編集力」。この能力について、脳科学の第一人者である茂木健一郎氏は次のように話す。
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従来の編集って縦のものを横にしてみたり、順番を並べ替えてみたりすることで、新しい視点を見つけ出そうという思考のように思われがちですが、脳のメカニズムから言うと、編集という思考はもっとも創造的なプロセスなんです。
編集力を磨くには、まず圧倒的な経験値が必要です。本を乱読する。好奇心をそそられる体験をする。たくさんの人から話を聞く。ネットワークを作る。こうした、脳に蓄積された経験というデータが百なのか、千なのか、1万なのかによって、人が発揮できる編集力は大きく異なります。
脳における編集のプロセスは意識ではコントロールできませんので、大切なのはアイドリングしている状態を作ることです。とくに今日のデジタル情報社会において、私たちの脳は常に「オン」の状態なので、これを意識的に断ち切って「オフ」の状態を作る必要があります。脳科学の分野ではこれを「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」といって、脳を休ませることで蓄積した情報を熟成させるという意味があります。
DMNの方法は人によってスタイルが違います。『20世紀少年』などで知られる漫画家の浦沢直樹さんは、仕事が進まない時は仮眠をとるそうです。重要な判断をする時には散歩に出かけると言ったのは、スティーブ・ジョブズでした。
ビジネスにおける編集力を鍛えるためには、脳の無意識な編集を邪魔しないこと。何か膨大な量のデータを分析するだけでは、編集力というものは養われないのです。
※AERA 2014年4月28日号より抜粋
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