医学部入試の人気が過熱している。2013年度は、全国の医学部の総定員9041人に対し、のべ13万172人が志願した。1999年度の志願者数は7万7940人。この年以降、志願者はほぼ毎年上昇し、13年度までに7割近くも増えた。
「不況になると、就職に強い理系が人気になります。理系のなかでも成績上位層は、やりがいがあって、生活が安定する医師を目指す生徒が増えています」
こう話すのは、昨春、国公立大医学部に1905人の合格者を出した駿台予備学校の石原賢一情報センター長だ。
ここ数年、東京大学の合格者数ランキングの常連校で、「東大ではなく医学部」を目指す生徒が増えている。進学校では理系が人気で、例えば国公立大医学部に多数の合格者を出す東海高校(愛知)では、11クラス中9クラスが理系だ。
これは同校に限った現象ではなく、さらに成績トップ層は医学部を目指す傾向にある。以前なら東大や京大の工学部、理学部、農学部などに進んだ生徒たちが医学部に集中すると、人材が偏り、将来的には他分野の人材不足まで懸念されるとの見方もある。
駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールなど大手予備校には、国公立大医学部受験者向けのコースや講座があるが、50以上ある「医学部専門予備校」のほとんどが私大医学部受験者のためのコースを充実させている。
「6年間の学費が約350万円の国公立大の受験者が、大手予備校で1年間学ぶ学費は、70万円から100万円くらいです。一方、6年間の学費の平均が3千万円を超える私立大医学部の受験者向けの予備校では、年間の学費が500万円を超えることも珍しくありません」(小林室長)
代々木ゼミナール個別指導スクールの医学部専門のコースは、年間の学費が540万円。さらに、学費を含む総費用が年間1千万円という「私立大学医学部合格オールパックコース」もある。このコースには、学費、講習会授業料、特訓合宿参加費などのほか、新宿駅から徒歩5分の代ゼミタワー上層階にある寮の費用(2食付き)も含まれるという。
※AERA 2014年4月21日号より抜粋