1月中旬に東京ビッグサイトで行われた「マイナビ就職EXPO」でも、企業の各ブースは似たような黒いスーツ姿の学生であふれた(撮影/門間新弥)
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 就活に励む学生たち。そのリクルートスーツはほとんどが「黒」。リクルートスーツは黒がいいという「神話」の影響もあるようだが、本当に黒いスーツは就職に有利なのか。青山商事のブランド「ザ・スーツカンパニー」が昨年12月に公表した「新卒者の面接時における見た目」についての調査結果は、学生の黒信仰に疑問を投げかけるものだった。

 新卒採用に携わる経営者や役員、会社員、公務員206人を対象にしたアンケートでは9割以上が「見た目」を採用ポイントに挙げ、さらに好印象を抱く箇所として「体形に合ったスーツの着こなし」(66.8%)、「靴がピカピカ」(47.7%)、「ズボンの折り目」(41.7%)が上位を占めた。「スーツの色(紺や黒系)」の評価は5番目だった。

 現在、企業の採用に携わる30~50代の就職活動時のスーツは紺やグレーが主流だったという点も見逃せない。実際に就職イベントの会場で採用担当者に話を聞くと、「色は見ていない」という答えが返ってきた。

 あえてリクルートスーツで個性を出そうとする学生もいる。米国留学から帰国し、就職活動に挑む甲南女子大学4年の中西舞さん(22)は、行き慣れた百貨店で紺地にストライプのスーツを購入した。理由は、

「黒スーツは自分らしくないと思って。試着してみたらこっちのほうが似合ったので、紺にしました」

 これまで希望する航空・ホテル業界の説明会に紺のスーツで参加したが、どの会場でも黒スーツ姿の学生しか見かけなかった。採用試験が本格化する中、自分にとって紺スーツは、「自分の良さが伝わる、自分を一番良く見せてくれるツール」と笑顔で話す。

 ライバルは国内だけにとどまらない。日本の金融・証券会社に就職し、世界を股にかけて活躍するのが夢という上海出身の北海道大学大学院法学研究科修士1年、石文漢(セキブンカン)さん(26)のスーツは濃紺だ。

 体にぴったり合っているかを重視するため、スーツとシャツはフルオーダーメード。スーツの袖から見えるシャツの長さやネクタイの幅といったビジネスマナーにも気を配る。ネクタイはシャネルの淡いブルー地とレッド地の水玉柄2本を準備していて、選考が進むにつれ、レッドからブルーに替える戦術だ。

「レッドは情熱の象徴であり、元気な第一印象を与えたいと思うからです。役員面接用として、新たにブルー地のストライプ柄も購入する予定です」

 希望する大手証券会社の合同説明会を聞きに東京を訪れていた石さんに、会場にあふれる黒スーツ姿の日本人学生の印象を聞くと、こう答えが返ってきた。

「一体感があって、いいんじゃないですか。でも個性は出ないと思います。みな同じ人のように見えますし」

AERA  2014年4月7日号より抜粋

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