「住みたい街」として常に上位に名を連ねる吉祥寺。しかし、住む際の安全性や住みやすさということになると、話はまた別のようだ。
駅を降りると賑やかな通りが延びる。週末だけではなく、平日も訪れる人でごった返す。古くから吉祥寺に住む50代の主婦は話す。
「住宅街に一歩入れば静かで、買い物も便利です」
吉祥寺は、井の頭線(京王)急行で17分ほどで渋谷に、中央線(JR)で16分程度で新宿に行くことができる。一方で、こんな声もある。
「住みにくい街。人が多くて、土日は外に出られない。最近は自転車で来る人が増えて、街中の自転車の通行量が格段に増えました。3歳の子どもを外出させるのが危ないと感じるほどです」
と言うのは5年前に引っ越してきた会社員の36歳女性だ。そもそも、住みやすさの基準は人によって異なる。「賑やか」を好む人もいれば、「静寂」を心地良いと感じる人もいる。だが、そこに欠けている視点がある。「災害」に耐えられるのか、という視点だ。防災学者で神戸大学名誉教授の室崎益輝さんは話す。
「日本人は災害の多さに比して危機感が薄い。住みたい街といった場合も、おいしいお店があるかどうか、買い物が便利か、などが優先されがちです」
そこで、災害が起きた時に住民の安全や暮らしを守る力があるのか、街を評価した。評価項目は(1)災害の観点から洪水、津波の浸水域、地震による火災被害の想定域にあるか(2)医療の指標としては、救急車の出動から現場への到着時間▽高度な救急医療を担う「3次救急医療機関」までの距離(3)暮らし、安心の観点からは、コンビニ、交番が近隣にあるかどうか。
対象は、「住みたい街」(リクルート住まいカンパニー調べ)の、関東、関西のランキング上位から29カ所のターミナル駅を選んだ。
吉祥寺は、関東で8位となった。揺れにくい地盤だが、医療機関へのアクセスが悪い。人口に比べてコンビニも交番も少ないからだ。トップは、救急車も短時間で到着し、医療機関にも近い藤沢(神奈川県藤沢市)だった。
※AERA 2013年10月28日号より抜粋