「太陽の塔」(大阪府吹田市)の内部は、実は、空洞ではない。外観以上のインパクトを持つ“内臓”がある。

 故・岡本太郎氏がデザインし、大阪万博(1970年)開催当時はテーマ館の一部として公開されたが、閉幕後は封印された。2003年に内部公開された際には、1970人の募集に対して2万4千人が応募。企画の担当者は参加者から「よくぞ実施してくれた」とサイン攻めにあった。しかし塔内の観覧は1階のみで撮影は不可だった。

 近年は造形物落下の恐れがあり公開できない状況だ。その中は今、どうなっているのか。

 塔の背後にある細い階段から下へ。かつては地下にも展示があったが、今は埋められ何もない。1階には照明があり、壁は立体的な襞(ひだ)のあるデザイン。今も真紅を保つ。中央に立つ「生命の樹」は直径1m、高さ41m。鋼管で曲線を描く。現在も伸び続けているような躍動感。色も鮮やかだ。

 2階へは懐中電灯を照らしながら大階段を上がる。さらに今は動かないエスカレーターを腕の辺りまで歩いて上がる。「樹」の枝にのる造形物は多くが壊れ、埃にまみれているが、ひとつの樹によって命がつながっていることを示す。自然、環境、歴史、国境など、あらゆるものの暗喩にも見える、壮大な世界観だ。ロボットや電子工学で未来を提示した大阪万博にあって、命の営みこそが大切だと表現した。

 美術史家で岡本太郎研究でも知られる山下裕二さん(明治学院大学教授)は言う。

「生命の樹は系統樹のようになっていて、アメーバのような原始的な生物から人間へと進化するが、岡本太郎はあえて『自分は進化なんかしていない。原始的な生命こそが重要なんだ』と挑む姿勢を示した。内部は彼の頭の中でもある」

AERA  2013年9月9日号