1941年生まれ。63年東映動画に入社。85年スタジオジブリ設立にかかわる。アニメ制作一筋50年。長編映画ほか、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」など名作多数(撮影/今村拓馬)
1941年生まれ。63年東映動画に入社。85年スタジオジブリ設立にかかわる。アニメ制作一筋50年。長編映画ほか、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」「未来少年コナン」など名作多数(撮影/今村拓馬)

 アニメ界の巨星、宮崎駿監督がついに長編映画から引退する。今月1日、電撃的に宮崎監督の引退が発表されたが、6日、本人の口からこう明かされた。

「何度もやめると言ってきた人間ですが、今回は本気です」

 記者は監督引退のニュースを聞くたびに、1997年「もののけ姫」で監督に取材した時のことを思い出す。その時に挙げた引退理由の一つが年齢だった。当時56歳。40代になってから特に衰えを感じるようになったという。集中力や気力が失せ、アイデアを搾り出すようになった。自身を「老害寸前」と言い、アニメーターの年齢的限界を訴えていたとも。ところが、間もなくその言葉を翻意。4年後に「千と…」を発表した。この時も監督は「もう長編は無理」と体力の限界を訴え引退をほのめかしたが、やはり、発言を翻した。

 現在72歳。公開中の「風立ちぬ」は前作「崖の上のポニョ」以来、5年かけて完成した。テレビのドキュメンタリーで、「作業量は最盛期より5分の1に減った」とぼやき、「衰えを感じない日はない」と語っていたが、記者会見で「作品と作品の間がずんずん開いていくのをどうすることもできなかった」と明らかにした。一番つらかったことを問われると、

「どの作品もスケジュールはきつかった。終わりまで見通せる作品に入ったことがなかったので、それはつらかったです」

 子どもの頃から家族で宮崎アニメを楽しみ、キャラクターデザイナーを目指してきた吉野千穂さん(24)は、

「宮崎監督の作品をつくり続けるには、相当な体力と精神力が必要。前々から一線を引くという話だったので寂しいですが、引退のニュースは『あぁ、そうなんだ』と驚きはありませんでした」

 アニメ評論家の藤津亮太さんは、

「宮崎さんほど、手間ひまかけて長編映画をつくってきた人は世界を見てもいません。宮崎監督はやりきったと思います」

AERA 2013年9月16日号