睡眠を制する者は、人生をも制す。著名人の中には快眠寝具や独自の安眠法で快適な睡眠を手に入れ、人生を好転させた人もいる。
「毎日4、5時間睡眠だけど、周りが困るほど猛烈に元気」
と胸を張るのは水道橋博士さんだ。最近は芸人としての活動に加え、単行本や毎回3万字以上の原稿を書くメルマガなど、著作活動も加速度的に増えている。超人的なバイタリティーは、睡眠や健康に対する独自の哲学から来るらしい。もともと博士さんは、“ショートスリーパー”ではなかった。1年ほど前から自力で「脳に強い指令」を出し、自らその体質を手にしたことで、人生が変わった。
「そんなバカなと思うかもしれないけれど、脳の思い込みによって体の可能性を広げることができると、僕は信じています」
ショートスリーパーになったきっかけは、園子温監督の仕事ぶりに対抗意識を燃やしたこと。映画を撮り終わるまでは寝なくても平気という話を聞いて、一定期間、自分も寝食を忘れて仕事に没頭しようと決めた。その状態が今も続き、すごく調子がいいのだという。
「思い込みってすごいですよ」
何事にも独自のこだわりを持つ博士さん。様々な健康法にハマっていた時期を経て、いまではあえて健康を意識しない生活にシフトした。突き詰めて考えた結果、健康とは、点でしかとらえられないものだと悟ったからだ。しかもそれは、ピークを常に上方更新しなければならない運命にある。
「長距離を走れるようになったら、次はフルマラソンだ、トライアスロンだと挑戦を続けていくしかなくなるでしょ? 以前より体は健康になっているのに、昨日より今日はダメだ、とメンタル的には下降線をたどってしまう。それで不健康になるくらいなら、あえて健康を意識しない生き方のほうが、実は健康的なんじゃないかって」
短時間で質の良い眠りを確保する工夫もユニーク。まずベッドは、大女優・森光子さんと同じモデルのパラマウントベッド社製介護用ベッド。腰痛持ちなので、マットレスは「最硬」だ。
就寝前、娘のために買ったバナナの形をした雑貨、通称「伸びるバナナ」でチューブトレーニングよろしく肩甲骨をストレッチ。必ずアイマスクを着用し、時事ネタを仕入れるために欠かさず聴いているニッポン放送の「ザ・ボイス そこまで言うか!」のポッドキャストを流しながら目を閉じる。その心は、
「寝付けなくても、必要な情報は得ているから、無駄な時間ではないと思えて落ち着ける」
短くも十分な睡眠の質は、最近の尋常ならざる仕事量から推して知るべし。
※AERA 2013年9月2日号