〈部屋の中を見渡すとオモチャ、洗濯物、ゴミがタプーリ!掃除・洗濯・整理整頓…ッテナンデツカ?ここはそんなダラ奥達を生温かく見守り、お互いに「喝」と「豆知識」を与え合い、何気にステ奥を目指すスレです〉

 で始まるスレッド「ダラ奥タン、今日こそ家事しませんか?」は2002年7月に立てられて以来、現在は30本目という長寿スレッド。子どもに振り回され、体力の限界を感じた主婦たちから生まれたゆるやかで楽ちんな手抜きライフ。というか果たして本当にそんな奥さま、いるのだろうか。

 今年で結婚15年目の専業主婦のミカさん(37)。薄いネイビーのセパレートワンピースで待ち合わせ場所に現れた彼女は、色白な肌にほぼノーメーク。髪は少しウエーブがかかったセミロング。ダラ奥というより清潔感あるミセスという雰囲気だ。

 彼女の一日は毎朝5時半、家族の朝食準備から始まる。6歳年上の商社勤務の夫と11歳の息子を愛車で駅まで送る。だが、6時半に家に戻ると、息子のお迎えがある夕方5時半まではリビングのソファで二度寝するか、パソコンに録りためておいた韓流ドラマを見るか。何話もまとめて見るため、1.5倍速で再生する。なんとも贅沢である。

「基本的に、うちは平日でも主人が夕食を作ってくれることが多いんです」

 と語るアイさん(30)は、上は11歳から下は6歳まで3人の子どもをもつ専業主婦。ツヤツヤと光沢感あるストレートセミロングヘアの彼女は、一見20代にも見えるほど。外見からはダラ奥という言葉から連想されるダラシナイ感じはゼロ。なのに普段、買い物以外は家から出ない。人と会うためにメークして外出したのは、取材で会ったこの日が1カ月ぶりだという。

「主人には干物主婦と認定されました。子どもに朝もご飯を食べさせたい気持ちはあるんですが、いつもパンになってしまう。スマホ片手にママサイトを見ているうちに日が暮れます。最も幸せな時間は、キッチンで主人が作る料理を子どもたちと待っているとき。子どもが寝たあと、私が寝ている布団まで主人がカクテルを持ってきてくれて乾杯する時間も幸せですね」

 アイさん曰く、子どもは家事はパパがするものだと思っているふしがあるくらい、自分は家の中では動かないという。

 先のミカさんがダラ奥になったいきさつは大学時代にさかのぼる。大学卒業前は商社に就職が決まっていたにもかかわらず、単位の履修ミスでなんと留年。落ち込む日々の中、今の夫と出会い、結婚直後に彼の海外赴任でブラジルへ。流産など思い通りにならないことがあった中、

「合理的で楽観的に生きる欧米のマダムたちと出会い、割り切って流れに身をゆだねることの大切さを実感したんです。体が弱いなら無理せず休む。上を見ずに足ることを知る。いい意味で諦めることで、家族にも元気な笑顔を見せられるんです」

 アイさんは実は、昨年までシングルマザーだった。元夫のDVに耐えかね離婚し、現在の夫と出会って再婚。

「子ども3人を抱えてひとりで頑張ってきた分、今はダラ奥でも許してくれるんだと思います。でもずっとダラ奥だったら、いつか夫が去っていくんじゃないかと心配です」(文中カタカナ名は仮名)

AERA 2013年9月2日号