妻子あるバイダーマン氏。「10年間の結婚生活で一度も不倫はしていません。ただ、6カ月間セックスレスだったら、考えるでしょうね」(撮影/写真部・工藤隆太郎)
妻子あるバイダーマン氏。「10年間の結婚生活で一度も不倫はしていません。ただ、6カ月間セックスレスだったら、考えるでしょうね」(撮影/写真部・工藤隆太郎)
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「人生一度。不倫をしましょう」

 そう堂々とトップページに掲げた既婚者向けSNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)「アシュレイ・マディソン」が6月、日本でサービスを始めた。2002年にカナダでサイトを開設してから11年、今では世界28カ国で1900万人以上が登録している(独身者も登録可能)。

 匿名で自分の体形や「出会いたい」異性の条件を登録し、好みの相手が見つかると有料で連絡をかわすことができる仕組み。実際に会わなくてもインターネット上で恋人のようなやりとりができたり、自分の出張先で「出会い」を簡単に探したりと様々なサービスも揃っている。言わずもがな世間からの風当たりは相当強く、アメリカの国民的イベントであるスーパーボウルではCM放映を拒否された。だが、「不倫王」と罵られる創設者ノエル・バイダーマン氏(41)に後ろ暗さはみじんもない。

「不倫は結婚生活を救います。私はそのために、このSNSを立ち上げたのです。不倫は不道徳だと言いながら、結局みんなやってしまう行為。不倫でストレスを発散することで、家庭生活をしっかり守ることができる」

 バイダーマン氏はそう確信する。彼の言う通りなら、場合によっては夫婦間のセックスレス解消につながるかもしれない。

 このサービスの目的は、女性の性的欲求を解放することだという。

「女性向けに提供される性的サービスはほとんどない。その一方で、AV視聴者の約2割は女性というデータもある。女性の社会進出が進み、男女がお互いに貞節を守り子どもを育てていくという現状の結婚スタイルではストレスがたまり、結婚生活の破綻につながると思います」

 不倫は結婚生活を壊す最大の要因だという批判にバイダーマン氏は真っ向から異を唱える。男性は一夜限りの女性を求め、女性は継続的につきあいたいという傾向の違いはあるが、「アシュレイ」に登録する女性はロマンスを求めているだけで、結婚生活を破綻させたいと思っている人はいない、とバイダーマン氏。ネット上でのドライなつきあいである分、職場での不倫などと違って泥沼化もしづらいのではないかと分析する。ちなみにアメリカでは、お互いに自由恋愛を認めあう「オープンマリッジ」のほうが離婚率が低いというデータもあるという。

「日本での成功を確信しています」(バイダーマン氏)

 話だけ聞けばいいことずくめのような、この不倫SNS。数々の家庭問題にコンサルタントとしてかかわった「東京家族ラボ」主宰の池内ひろ美さんは「とんでもない危険性を秘めたサイトですよ」と警鐘を鳴らす。まず、外国人との出会いに危険性が潜む。

お金目当てや、変態的な性欲の対象として日本人と出会いたいと考える外国人はかなり多く、そういった人にひっかかって金銭的、肉体的な被害を受ける人が出ないか心配です」

 不倫でストレスをすっきり解消→夫婦生活円満という筋書きにも異論ありありだ。

「一時的にうまくいくケースもあるでしょうが、日本人は嫉妬心が強く、不倫で楽しくやっていると伴侶はもちろん、同僚からも怒りをかい、足を引っ張られます」

AERA  2013年7月22日号