男性中心だった将棋界に女子が進出し、様相を一変させている。

 プロの対局の観戦に押しよせ、自らも指す。名人戦の前夜にはホテルで「前夜祭」が開催され、会場にはオシャレをした女子であふれかえる。翌日対戦する森内俊之名人と羽生善治三冠の前には、写真撮影や握手を求めて長蛇の列ができた。こうした熱心な「将棋女子」たちに、将棋にハマったきっかけを聞いた。

 前夜祭会場にいた女性会社員(38)が将棋の世界に惹かれたのは、数年前のNHK番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で羽生、森内両氏の特集を見てからだ。

「一戦一戦のお2人の心理状態などが克明に、実にわかりやすく描かれ、感動しました」

 特に勝負どころになると、毎回、震えが止まらなくなる羽生氏の様子に胸を熱くした。この世界をもっと知りたいと猛烈な勢いで情報を集め始めたという。

 前夜祭デビューのため、椿柄の着物まで新調した女性(36)は将棋に魅せられ、とうとう将棋会館で対局の受付の仕事も始めた。ハマるきっかけは、羽海野チカ作の漫画『3月のライオン』。主人公は天才棋士の少年だ。『ハチミツとクローバー』で女子たちのハートをガッチリつかんだ少女マンガ家が一転、『3月のライオン』では、天才少年のみならず、老棋士、中堅プロ棋士などの熱い勝負や、心の機微を繊細に、時に大胆に描いている。プロも絶賛の内容に、将棋ファンならずとも引き寄せられる。

AERA 2013年7月15日号